三菱自が「過ちに学ぶ研修室」まで作った理由 JALは「御巣鷹山事故」の教訓を学び続ける

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JALの安全啓発センターには、過去に起きた事故の概要がパネルで展示されている(記者撮影)

2012年からは約1万1000人の社員全員にセンターの見学・研修の受講を義務づけている。事故後に入社した社員が96%にも達し、教訓を学ぶだけでなく、次世代に語り継ぐ場としての役割も増している。社員は見学を終えた後、「私の安全宣言」と題して、感想や決意などを小さな紙に書いて、壁に張り出す。経営幹部も例外ではなく、4月から会長を務める植木義晴・前社長のメッセージも見つかる。

管理職への昇進研修でセンターを訪れたある社員のメッセージにはこうあった。「危機と向き合い、人と向き合い、話し合える職場の雰囲気を作る」。小さなミスを大きなミスに発展させないよう、情報を共有して多様なリスクに向き合うため、風通しのよい組織を作る決意だ。

「失敗」情報を社会の共有財産に

米ボーイング社の修理ミスが直接の原因とされるJALの事例と、故意に隠蔽と改ざんを繰り返した三菱自動車とでは、「失敗」の性質は異なる。だが、「失敗」から教訓を学び取り、未来に生かす義務があるという点では何ら変わりはない。JALのセンターは社外にも公開されており、開設以来延べ21万人が訪れた。人命の安全に関連する業界を中心に多くの企業が見学にやってくる。見学では1時間20分をかけ、センターの社員が丁寧に説明する。

全日本空輸(ANA)も「安全教育センター」を2007年に開設。普段のライバル関係を超えて互いの施設を見学し合い、意見交換をしているという。JALの辻井マネジャーは「事故から目を背けていては学べない。過去の失敗から学び合う文化を作ることで安全を追求していく姿勢が重要」と語る。

三菱自動車も、山下副社長が「外部から依頼があればお見せする」というとおり、社内外を問わず広く意見を交換し合える環境の整備が再生に向けて欠かせない。6月には同社のリコール隠しを題材にした池井戸潤氏の小説「空飛ぶタイヤ」が映画化され、社会の関心が再び高まる。過去の不祥事や事故などの「失敗」情報は会社や社会の共有財産として、学びたい人がすぐに学べる状態にする。そのことが過ちを再び繰り返さないための第一歩になるはずだ。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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