昭和のオフィスが金融と技術の最先端の場に 大手町ビルヂングはこうして受け継がれた
地下1、2階の飲食店フロアは、お昼時はたいへんなにぎわいで行列ができている店も。それ以外の時間帯も、地下鉄の乗り換え通路ともなっているため、常に人通りは多い。ビルの周囲を地下鉄5線に囲まれ、各線の駅と連絡しているのも便利な点。
今回取材で初めて2階以上のオフィスフロアに入ってみたが、テラゾー床に重厚なデザインの鋼鉄製のドアが並ぶ廊下は、昭和30年代築のオフィスビルならではの味わい。今時のビルにはない、歴史を重ねてきた物だけが持つ風格を感じる。
築60年の重厚なデザインがイノベーション空間に
大手町地区は、都市銀行、政府系銀行、外資系金融、弁護士、会計事務所といったプロフェッショナルファーム、コンサルティングなどのオフィスが多い国際金融センター。その地域性に合わせて、この大手町ビル内の4階に昨年設けられたのが、テクノロジーを利用して金融に関する技術革新を生み出すための拠点「フィノラボ」だ。近年、フィンテックによってモバイル決済、クラウド会計ソフト、仮想通貨など新たなサービスやシステムが生まれているが、フィノラボは、このようなフィンテックの新たな技術を開発するベンチャー企業の創業、成長を支えることを目的にしている。家具や環境、清掃などのサービス付きオフィスのほか、会議室、ラウンジ、イベントスペースなどを備え、頻繁に入居者同士の交流イベントが行われているほか、仕事上のマッチング、記者発表などの場ともなる。
フィノラボ内は、天井はダクトや空調機械が見えるスケルトン仕上げで、一見不完全さを感じるが、壁面は本物のブリックタイルを使用しており、ニューヨークの古いビルのよう。カラフルなデザインの家具が明るい雰囲気を演出している。この地区でもっとも古いこのビルに、意外にも金融とテクノロジーの最先端を追い求める、こんなスペースがあるというのがおもしろい。
この日の取材では、ビル内の意外な場所をもうひとつ案内してもらった。
それは屋上にある観音様「大手町観音」。ビル竣工時の三菱地所の社長渡辺武次郎氏の発意により、昭和42年に建立された。「毎年春にはご開帳を行い、この地区の就業者の方に参拝していただく機会を設けていますが、毎回たくさんの方がお見えになります」(井上さん)という。
創建時の趣を保ちながら、今の時代にマッチした形で活用されている昭和
のシブいビル。今後もリノベーションしながら使い続けられていくということで、このビルの将来をたのもしく思った。
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