アマゾン「最強会員サービス」に死角はないか

米国本社プライム事業の責任者に直撃

――特徴的な需要があったり、ユニークな対応を行っている国や地域はありますか。

前提として、品ぞろえ、価格、迅速な配送の3点に対する要求は各国共通で、アマゾンはここに多大な投資をかけて利便性の向上に努めてきた。そうした小売りの根本的価値に加えて、たとえば配送なら速さだけでなく受け取り方法の多様性が求められたり、プライムデーのような会員限定セール、ビデオや音楽などのエンタメコンテンツも求められたりする。

これらの要素を、各国のニーズに沿って組み合わせ、細かくカスタマイズしている。たとえば日本では唯一、プライム会員の支払いに携帯キャリア決済(通信料金と一緒に支払う方法)を使えるようにしたほか、ポイント付与のプログラムを他国より充実させている。一方、越境ECの需要が大きい中国では、プライム会員向けに4つの国から購入できるサービスを設けた。

プライムサービスはエンタメも重要な柱だ。音楽聞き放題サービスの「アマゾン・ミュージック・アンリミテッド」は、プライム会員なら割引価格で利用できる(撮影:尾形文繁)

――プライムは米国での開始から13年、日本での開始から10年が経ちました。アマゾンの経営の中で、プライムの果たす役割は変わりましたか。

もともと、プライムは非常にシンプルなアイデアから始まった。「配送方法の選択に悩む必要がなければ、顧客は商品の比較など、本来時間をかけるべきことに集中できるのではないか」という考えだ。この思想やプライムの果たす役割は現在も変わっていない。

プライムではちょっとだけ余分にコストを負担すれば、そのコストをはるかに超えるたくさんの価値を得られる。アマゾンの総力を結集した「最強プログラム」になった。今後も配送だけでなく、ショッピングやエンタメなどさまざまな分野で追加的なサービスを投入していく。

大型買収でプライムはどう変わるか

――高級食品スーパーの「ホールフーズ」、家庭用セキュリティ機器の「リング」など、アマゾンとして大型の買収が続いています。プライムサービスの拡充に、これらの買収はどのように寄与しますか。

まずホールフーズについて。日常的な食品ECへのニーズが高まる中、われわれはプライムナウや、生鮮食品を配達する「アマゾンフレッシュ」のサービスで対応してきた。ここに世界的なプレミアム食品スーパーのブランドが加わることで、まずはアマゾンの品ぞろえを拡充することができた。

アマゾンは昨年以降、大型買収を続けている。高級スーパーのホールフーズ(右)のほか、監視機能を持つスマートインターホンを手掛けるリング(左)を買収した(写真:Ring、Whole Foods)

プライム会員がホールフーズの店頭で受けられる特典も増やしている。サンクスギビング用のターキー、バレンタイン用のバラの花束などを、プライム会員向けに特別価格で販売している。自社ブランドのクレジットカードを用いて決済すると、買い物額の5%が戻ってくるという仕組みも導入した。

リングについては、プライムとの関連で具体的に話せることはまだない。ただ、ひとつ言えるとすれば、アマゾンはデバイス領域にかなりの投資をかけている会社だ。今後のビジョンとして、プライムとアマゾンデバイスを一緒に使ってもらうことでさらに大きな価値を発揮する、という状態を目指していく。

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