将来5割減?「オフィス」に迫り来る構造変化 不動産大手がベンチャー支援を始めるワケ

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不動産各社が現時点で取り組む対策は、大きく3つある。

第一に、オフィスでのクリエーティブな活動や生産性向上に役立つ共用スペースや、従業員の待遇改善につながる保育所などの福利厚生施設の設置を提案すること。かつては旧式ビルばかりに本社を置いていた不動産会社が、三菱地所のように最新ビルに本社を移したのは、自らのオフィスをショールームにして新たな需要を喚起するのが狙いだ。

第二に、サテライトオフィスやシェアオフィスなどテレワークに適した拠点を展開することで新たなオフィス需要を取り込むこと。三井不動産は法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」を、昨年4月からわずか1年で全国約30拠点と驚くようなハイペースで展開している。

第三に、新産業を創出する可能性のあるスタートアップやベンチャー企業を多く集め、ビジネス拠点としての魅力を高めていくこと。最近では大企業が新規ビジネスを創出するために、革新的なアイデアや技術を持ったスタートアップと連携する動きが活発化している。スタートアップやベンチャー企業を育てることでオフィス需要の底上げを図ると同時に、有望なスタートアップやベンチャーの発掘に力を入れている大企業を引き寄せようという作戦だ。

コミュニティの形成が重要になる

これからのオフィスは、立地のよさや広さだけでなく、新規事業創出、知的生産性の向上、ワーク・ライフ・バランス実現などに貢献できるかどうかが重要になる。国土交通省も、昨年12月に「働き方改革を支える今後の不動産のあり方検討会」を立ち上げ、働き方改革やIoT、AI、RPAなどのイノベーション(技術革新)がもたらす不動産市場の構造変化への対応策について検討を始めたところだ。

冒頭のベンチャーカフェのイベントには、ベンチャー企業の経営者のほか、起業支援コンサルティング会社の幹部、スタートアップ育成に取り組む大学の職員などさまざまな人たちが集まっていた。そこで参加者が活発に交流することで、ビジネスのためのコミュニティが形成され、企業連携を生み出す基盤となっていく。こうしたスタートアップ・ベンチャー企業向けのビジネスハブが都内に続々と誕生することで、起業家やベンチャー経営者が自分たちの成長に適したコミュニティを選びやすくなったのは確かだ。

「どこのコミュニティが人気が高く、活気があるか。いずれは差が出てくるだろう」(起業支援コンサルタント)。不動産会社は新しい時代のオフィス需要をいかに取り込んでいくか。活気あるビジネス・コミュニティを形成し、成長企業や新産業が次々と誕生するエコシステム(生態系)を構築できるかが重要な課題となりつつある。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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