ネット企業の個人情報共有に欠落した「倫理」 議論の最前線に情報共有用のAPIが浮上
APIを巡っては2005年前後の誕生当初から、個人情報保護上の懸念があったが、その後急速に普及して影響力が拡大した。
APIの経済原理は単純だ。つまりソフトウエア開発業者は巨大ハイテク企業のユーザーにとって便利な道具を開発し、その見返りに大勢のユーザーへのアクセスを得る。
巨大プラットフォーマーは、人の目による点検や自動スキャニングによって提携企業の不正利用を検知するなど、保護措置を組み込んであると主張する。しかし専門家によると、点検が緩いため効力は薄い。
一部の企業は保護措置を強化してきた
ダートマス大のエンジニアリング教授ジェフリー・パーカー氏によると、自動監査システムは不正アプリやデータ盗用の検出には役立つが、情報の蓄積や加工、あるいはユーザーの利益に反する行為を禁じるのはずっと難しい。
一部の企業はここ数年、保護措置を強化している。フェイスブックの場合、開発業者がユーザーの「友達」の情報にアクセスするのを禁じた。しかし、元従業員によると最低限の監査しか行われていない。
ソフト開発業者側は、APIの利用条件を読みもしないことが多いと認めている。
人材採用ソフト会社スカウトのアンドレ・ブランク最高経営責任者(CEO)は、「警報が鳴っていないのに取り締まるのは難しい」と述べ、規則を破って大量の情報を入手するのは簡単だと述べた。
時差付きで電子メールを送信できるアプリ、ブーメランを開発しているベイディンのアレックス・ムーアCEOは、マイクロソフトからは提携時にサービスを詳しく調べられたが、その後監査された形跡はないと話す。グーグルからは最近、アクセスできる情報を減らす可能性について打診されたが、そうした干渉もまれだという。
取り締まりが強化されれば、情報共有の革新的なツールの供給は制限されるかもしれない。それでも、今週APIを発表したロイヤル・バンク・オブ・カナダなど一部の企業は、厳しく吟味した提携相手にしか情報アクセスを認めないなど、一歩踏み込んだ対策を講じるようになっている。
新興企業も対策に乗り出している。昨年APIを導入したアフェクティバは、サービス拡大に伴って提携企業を監査する構え。Gabi Zijderveld最高マーケティング責任者は「データの倫理的で透明な利用について、規制と法制化が必要になるのは避けられない」と述べた。
(Paresh Dave記者)
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