26歳「SASUKE」制覇の男が怪物と呼ばれる理由 森本裕介を形作った憧れと努力と仲間との絆
「最初はほかに運動神経がいい子がたくさんいたので負けていましたけど、僕はクリアしたいという気持ちが誰よりも強かったから、途中から勝てるようになりました。ほかの子たちが飽きても1人でやっていましたし、執着がすごかったですね」
中学生になってもSASUKEへの情熱は冷めることはなかった。まわりが恋愛にうつつを抜かしていても、森本はそちらには目もくれなかった。
「まわりは『彼女がほしい』とか、『彼女ができた』とか言っていましたけど、僕はそういうのには関心がなかったですね。ほかのことに興味が湧くこともなく、部活にも入らなかった。学校が終わったら家でずっとSASUKEの練習をしていました。SASUKEが一番、楽しかったからです」
もちろん、友達とどこかに遊びに出かけることがなかったわけではない。しかし、その回数はかなり少なく、高校に入ってからもそれは変わらなかった。人並みの青春を引き換えにSASUKEに惚れ込んだ、ということになるのだろうか―――。
「変人だと思われていたでしょうね。明らかにほかの子たちとはやっていることが違いましたから。中学生のころの練習としては公園の遊具をSASUKEのセットに見立てて行ったり、筋力トレーニングをしたり。部活ではないため仲間がいるわけではなく1人ですけど、寂しさを感じることもなかったです」
長野誠の完全制覇を見て本気になった
そんな森本をさらに刺激したのが、番組が有力な出場者として認めた「SASUKEオールスターズ」にも名を連ねる、漁師の長野誠だった。
「2006年10月の第17回大会で憧れの長野さんが完全制覇を達成したんです。それを見て、本気で目指すようになった。長野さんの前に秋山和彦さんが完全制覇をされたのは第4回大会。7年間くらい、ずっと完全制覇ができていなくて、できないのが当たり前のような雰囲気になっている中、長野さんがそれを打ち破った。
それまでは『ただ、出たいな』と思うだけで、番組出場に応募したこともなかったんですが、テレビの前で見ている場合じゃないって思わせてくれた。必死で調べて次の大会に応募しましたし、トレーニングも本格的にやるように変わりました」
親が家の近くに持っていた車庫と空き地に、父親に手伝ってもらいながらSASUKEに模したセットを作った。見よう見まねだったから、今思えば適当なものだったと振り返るが、ホームセンターでそれらしきものを買ってきて組み上げた。そのコースで練習するのがなにより楽しくて、のめり込んでいった。
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