「ジャパニーズウイスキー」の悲しすぎる現実 輸入モノが「国産」に化ける、緩すぎる規制

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大手酒類メーカー・本坊酒造傘下のマルス信州蒸溜所(長野県)は、一部銘柄で「ブレンデッドジャパニーズウイスキー」と表記していたが、現在は「ブレンデッドウイスキー」に改めた。同蒸溜所の竹平考輝ブレンダーは「輸入原酒も使ってブレンドしてあるものについては、消費者が混同しないようにした」と話す。

後発・新参メーカーにとっては「品質を向上させ、販売量を確保するため」(肥土氏)に海外産の原酒を使っているのが実態だ。

9割は混ぜ物で大丈夫?

また、原産地以前に、酒税法の定義自体を疑問視する声もある。同法では、サトウキビの搾りかすなどを原料にした醸造(ブレンド用)アルコールやウオツカなどのスピリッツの混和が9割まで認められている。

実際、イオンのプライベートブランド・トップバリュの「ウイスキー」、オエノングループ子会社の「香薫(こうくん)」や宝酒造の「凜(りん)」は、原材料欄にスピリッツやブレンド用アルコールと記載されている。

こうした表記は業界団体・日本洋酒酒造組合の自主基準で記載が求められているが、「罰則はなく、単なる努力義務程度」(伊藤洋・専務理事)など、どれだけ守っている企業があるのかは不透明だ。

「『ブレンド用アルコール』を使ってもウイスキーを名乗れるというのは、ほかの世界5大産地ではありえない」(評論家の土屋氏)。ベンチャーウイスキーの肥土氏も「この定義のおかげで戦後の物不足の時代にもウイスキーが飲めたという歴史的な背景はあるが、そろそろ見直すべき」と話す。

日本酒やワインは、先んじて原産地表記の規制を進めてきた。ブランドや品質を保証し、輸出を促進したりするためだ。

ここにきて業界も「ジャパニーズウイスキーの基準について、昨年から検討を始めている」(伊藤専務理事)と動き始めている。

国内外でさめやらぬジャパニーズウイスキーブーム。その裏には、業界全体で取り組まなくてはならない課題が山積している。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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