ホンダ「ステップワゴン」改良半年の通信簿 ハイブリッド追加で販売はテコ入れしたか

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もともと「アコード」から設定されているi-MMDがオデッセイに設定されてから2年ほど経過しており、ステップワゴンに搭載するにあたって、それなりに時間を要したわけだが、そのぶん仕上がりはなかなかのもので、動力性能はかなり力強く、それでいて燃費も良好だ。加えて静粛性にも優れ、ガソリン車に対して表に出ない部分でもあれやこれやと差別化されており、全体としてガソリン車よりもずっと上質な乗り味に仕上がっていることは乗ると明らか。ハイブリッドを待っていた人にとっては、まさしく待ったかいがあったといえそうだ。

購入者からの評判も上々で、走りと燃費のよさに加えて、静粛性や走り出しの加速感などが高く評価されているという。

価格についても、ガソリン車に対してはそれなりに高いものの、くだんの走りと経済性、先進運転支援システムや充実した装備などを考えると、トータルで見ると高くないといった声や、ハイブリッドがメディアでもポジティブに報じられたことで、販売の現場でも購入者から評判どおりとの声が多く聞かれるようだ。

他社にも身内にも競合相手がいる状況

ちなみにハイブリッドはステップワゴンのスポーティモデルである「スパーダ」のみの設定であり、スパーダの販売比率もガソリンのみだったマイナーチェンジ前でも8割超だったところ、マイナーチェンジ後は9割を超えている。もはやステップワゴンは、スパーダのみでもよいのではないかと思うほどだ。

日産自動車のミニバン「セレナ e-POWER」(撮影:尾形文繁)

折しも三つどもえのMクラスミニバンは、ステップワゴンの少し前にトヨタの3兄弟もマイナーチェンジを実施し、販売をさらに上積みしたばかり。一方のセレナも例の騒動も一段落したところで、晴れて「e-POWER」という強力な武器を得た。そんな強力なライバルだけでなく、フリードという身内とも戦わなければならないのがステップワゴンである。

ステップワゴンをメインで検討していたものの、販売店でステップワゴンのついでにフリードを見て、これで十分と思って購入にいたる人も少なくないとか。その逆はあまりないようだが。

一方のトヨタにもシエンタというミニバンのエントリーモデルがあるが、3兄弟とはポジショニングがだいぶ違うのに対し、ステップワゴンとフリードはかなりキャラがかぶる。実際に、ステップワゴンのマイナーチェンジ以降はフリードの販売がやや下がっている。やはりステップワゴンとフリードの販売の動向はお互いに密接な関係があることには違いない。

ひとまずステップワゴンのテコ入れは成功したといえる。日産セレナが出荷停止となっていた昨年11月にはノアを抜いてカテゴリー2位に浮上し、ミドルクラスのミニバンの中で再び存在感を示すことができたのは、ホンダにとっても大きな励みになっているだろう。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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