「激しいスポーツと認知症」の意外に深い関係

米国ではアメフト選手の告発映画も話題に

米国ではこの慢性外傷性脳症が大きな問題になりました。米国の国技であるアメリカンフットボールで活躍した花形選手たちが、引退後、脳に障害を起こし、認知症と同様の症状を示す人が何人もいることが明らかになったのです。

亡くなった複数の元フットボール選手の脳を病理解剖すると、タウたんぱくのごみが発見されました。頭部外傷による衝撃が、アルツハイマー病でたまる脳のごみ、タウたんぱくを放出させ、その蓄積を促進させているのではないかという研究も報告されています。

外傷を受けてから数年~数十年後に症状が現れ、次第に悪化することもわかってきました。記憶障害や注意障害に加えてうつ病や妄想などを合併することが多く、自殺のリスクが高いことも特徴です。パーキンソン病のような手足の震えなどの症状もあり、アルツハイマー病とは異なる症状も見られます。

ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の調査では、アルツハイマー病やそれに近い病気と診断された元フットボール選手は米国の30~49歳の一般男性の19倍、全NFL選手の3分の1が認知症を患っている可能性があり、しかも、一般人よりかなり若くして発症すると報告されました。

2011年にはNFLに所属する6000人の選手たちが、脳障害の補償を求める集団訴訟を起こし、全米の関心を呼びました。2015年には、ウィル・スミスが主演し、この集団訴訟のきっかけとなった医師が主人公の映画『コンカッション』(脳震盪)がその年のゴールデングローブ賞にノミネートされたほどです。

米国ではサッカー、ラグビーや柔道でも注意が呼び掛けられ、頭部外傷による脳障害や認知症のリスクが広く知られるようになりました。

また、スポーツによる慢性外傷だけでなく、交通事故などによる単発の重い頭部外傷でも、アルツハイマー病でみられる脳のごみが蓄積することが観察されており、認知症の原因となる危険性が指摘されています。

米国では10歳以下の子どもはヘディング禁止

子どもたちに人気のスポーツにサッカーがありますが、小中学生から本格的にプレーしている子どもたちは世界にたくさんいます。サッカーにつきもののヘディングは、軽いとはいえ頭部への衝撃があるため、将来、脳障害のリスクへの懸念が出ています。

2015年よりアメリカサッカー協会では、10歳以下の子どものヘディングを禁止しています。11~13歳以下の子どもは練習中のヘディング回数を制限し、慎重な対応を勧めています。ただし、これまでの研究では、ヘディングと認知機能障害の関連ははっきりしていません。

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