「小泉小委員会」は結局、何を議論したのか?

アドバイザー・石川善樹氏が振り返る

人生観も大きく変化してきました。終戦直後は、老いも若きもひたすら働くしかありませんでした。「働く=人生」だったのです。

ところが高度成長期になると、世界の先進諸国では、「学ぶ、働く、休む」といった具合に、人生は3ステージに分かれました。これは本当に大きな変化で、たとえば、ジェームス・ディーンは、なぜ「理由なき反抗」をしていたのか? それは、働いていないからですよね(笑)。同様に、タケノコ族なんかが現れたのもこの時代の特徴ですよね。

では、今はどうか? ないんですよ、それが。22世紀の日本人が、それこそ100歳まで生きてしまうのだとすれば、その人生の軌跡はいかなるものなのか? もちろん自由に生きていってかまわないわけですが、一方で社会に生きる個人として、最低限果たすべき責任は何なのか?……など想像すら難しい問題がたくさんありました。

人は何を望み得るか?

そして、議論を進めるうえで「あーこれは特に難しいな」と感じた3つめの限界が、「人は何を望みうるか?」です。

歴史を振り返ると、戦後の日本人は、とにかく食料を求めていました。だから選挙なんかも争点は、「誰が自分たちを腹いっぱい食わせてくれるのか?」ということでしたよね。

しかし、日々の糧を求める一方で、「精神的な糧」も求めていたように思います。たとえば1947年、岩波書店が西田幾多郎の全集第一巻として『禅の研究』を発売した際には、一ツ橋の同書店には3日前から行列ができて、当日は1200人もの学生が並んだという逸話が残っています。iPhoneに行列をなす今からすると、考えられない話ですよね。

その後の高度経済成長期は、ご存じのとおり、欧米型のライフスタイルを望みましたよね。モビリティが高まったことによって、人々は郊外に一軒家を建てるようになり、商店街は大規模モールへと変わっていった。誰もが「今日より明日は豊かになる」……そう信じて疑わなかった時代です。そして大前提にあったのが、「20年学び、40年働き、20年休む」という人生の3ステージモデルです。

……そして現在なわけですが、いまの日本人は人生に対して何を希望しているのでしょうか? そもそも、まだ100歳まで自分が生きるかもしれないと思っている日本人は少数です。僕はいろいろな機会をとらえて調査しているのですが、ほとんどの日本人は「80歳」くらいが自分の寿命だと思っています。

そのような状況の中、「昭和の人生モデルが古くなり、人生100年時代になりました!」と言われても、困る人のほうが多いかもしれません。

しかし、未来は狙い、創っていかなければなりません。小泉小委員会では、『人生100年時代の国家戦略』の中に書いてあるとおり、喧々諤々の議論を経て、次のようなメッセージに到達しました。

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