(第2回)企業の新規事業を成功に導く考え方とは?
では、どうすればよいのでしょうか。
もしあなたが企業のトップ、もしくは企業内の新規事業マネージャーとして、新規事業を成功させようと思うのなら、ここは考え方を変えて、ハングリー精神やモチベーションの乏しい人間がオペレーションを行うことを前提とした事業を選べばいいのです。あるいは、一部の非常にモチベートされた人間だけで運営できる組織を考えるということです。
例えばファーストフード店。マニュアルとして業務をフォーマット化する力と、それを管轄するマネジメント能力が大事なのであって、個々のアルバイトスタッフがハングリーで高いモチベーションを持っていることは、それほど大きな成功要因ではありません。
また、中堅企業が今後、外食業を新たなビジネスの柱として展開したいと考えた場合、いきなり自分たちですべてオリジナルの業態開発をはじめるのではなく、すでにフランチャイズシステムを確立した他社のフランチャイジーから始めるという手もあります。すでに実績のあるフォーマットを導入することで、現状のリソースに左右されることなく、リスク少なくスタートし、ノウハウを蓄積すると同時に、プロジェクトメンバーの中でモチベーションが高い人間を選別することも可能になり、将来的な自社展開の基礎とすることができます。
あるいは、ソフトウェア制作を新規事業として選択するなら、斬新な内容や機能ではなく、定番ものをいかに低価格で提供できるかというところで勝負する。そうすると、これは最終的に資本力がものをいうことになるので、企業が行う方が個人ベンチャーに比べて有利になるというわけです。
こうした、与えられた環境やリソースについて、「ないからできないとあきらめる」「ないものねだりをする」のいずれでもなく、冷静に現状のリソースを分析した上で、「現状に最適な事業展開を選んでいく」「大企業だからこそ成功しやすい事業を考える」ということは、企業の新規事業を成功に導く上で、重要な考え方です。
本連載では繰り返し述べていくことになりますが、前回も記載したように、そもそも新規事業というもの自体が、どれだけ優秀な人材による精緻かつ有望なプランニングを行なっても、最終的には極めて成功確率は50%もないというネイチャーを持ったものなのです。そういった原理を前提に、自分たちの勝てるタイプのビジネスは何かということを常に、スタートした後でも、あきらめず考え続けること。それを、高いモチベーションを持って新規事業に取り組んでいる「企業内起業家」であるみなさんに是非お勧めしたいと思います。
~「プロ」が教える成功法則~
坂本 桂一 著
場当たりが先行しがちで前に進まない新規事業。失敗率は9割以上とも言われる。成功のために何をすべきなのか。200社以上の事業に生命を吹き込んだ「プロ」のノウハウを大公開。
(株)フロイデ会長。事業開発プロフェッショナル。山形大学客員教授。
専門は新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。1957年京都市生まれ。
東京大学入学後、在学中にソフト制作会社�サムシンググッドを設立する。以後も(株)ソフトウィング、アルファシステム(株)、アドビシステムズ(株)(当時社名アルダス(株))、(株)ウェブマネーなどを設立し代表、会長に就任。うち数社を年商数百億ビジネスに育て上げる(以上すべて現在は退任)。日本のITビジネスの黎明期より、その牽引役として活躍。ソニーSMC70、シャープX68000、WINDOWS3.0J、プレイステーション等の開発にのスタンダードとして成功を収める。
現在、これまでの実業家経験を生かし、ハンズオン型のコンサルティング活動を行っている。
著書に、『頭のいい人が儲からない理由』(講談社、2007年)、『新規事業がうまくいかない理由』(東洋経済新報社、2008年)がある。
(株)フロイデ http://www.freude.bz/
新規事業開発から既存事業の成長戦略立案まで、総合的、創造的なコンサルティングを実施。特色は「事業立ち上げ経験者」を中心としたビジネスパートナーネットワークによる新規事業立ち上げ、経営改善のハンズオン型サポート。特に成熟ビジネスにおける「新しい付加価値」創造において、多くの実績を保有する。
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