物覚えの悪い人が知らない記憶のカラクリ 大事なのは運動、ただし「過酷」は厳禁だ

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暗記力=ランニング(30分までが限度)や少し長めのウォーキング
連想記憶力(顔と名前を一致させるなど)=筋力トレーニング
カギをどこに置いたか思い出すような記憶力=ランニングと筋力トレーニングの両方

あらゆる種類の記憶力を高めたいのであれば、ランニングと筋力トレーニング、両方をおすすめしますが、もしどちらかを選ぶのであれば、現代科学では「ランニングなどの有酸素運動」がベターとされています。

また、暗記力をできるだけ早く、そして最大限に上げたい場合、「歩きながら単語を覚える」など、運動と暗記を同時に行うことも科学は推奨しています。

「マラソン」をすると記憶力が下がる?

では、運動すればするだけ記憶力は上がるかと言われると、そうではありません。マラソンやトライアスロンのような過酷な運動は脳や記憶力にはプラスよりもマイナス面のほうが多い、というのも科学の現在の見解です。

アメリカのある研究チームは「運動による記憶力強化の限界」を調べるため、たくさんのマウスから走るのが好きなマウスを選んで交配し、走るのが何よりも好きなマウスを創り出しました。

その中からさらに一番よく走るマウス同士を交配し、さらに次の世代の一番よく動くマウス同士を交配……このように交配を重ね、とうとう普通のマウスの3倍もの距離を自ら走る「マウス版ウルトラランナー」が誕生しました。人間が20~30キロ走るのに等しい距離を1日で走る、超人マウスです。

『一流の頭脳』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

科学者たちはこのマウスの記憶力を調べるため、迷路に入れました。普通なら、よく走るマウスは運動によって記憶力が強化され、新しい空間を早く把握することができます。

しかし、この超人マウスは意外なことに、迷路を抜けるのに普通のマウス以上に時間がかかりました。さらに、ストレスホルモンのコルチゾールの血中濃度も高かったことがわかったのです。

脳が恩恵を受ける運動量には限度があります。それを超えるとストレス反応が抑えられるどころかむしろ強く作用して、記憶力の低下を招くというわけです。

覚える力は少し体を動かすことで高められる――このことから、試験勉強や仕事関係で何かを覚えるとき、「散歩に行っている暇はない」と決めつけないほうが得策です。

その散歩の時間は、思いがけず「脳の貯蔵庫」にとって有益なものになるのですから。

アンダース・ハンセン 精神科医

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Anders Hansen

スウェーデンのストックホルム出身。カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)で医学を、ストックホルム商科大学で企業経営を修めた。現在は精神科病院に上級医師として勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている。ラジオやテレビでも情報を発信、講演活動も精力的に行っている。

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