黒田総裁続投で心配な日銀執行部の思考停止 財政ファイナンスしていない、では通らない

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日銀本店で1月撮影(写真:ロイター/Kim Kyung Hoon)

ひとたびインフレになれば、過去にも日銀はインフレを抑えた経験があるのだから何の心配もない、とまで強気でいられるか。財政出動なしに金融政策だけでデフレ脱却ができれば、インフレ目標2%達成後にインフレ圧力がかかっても、金融政策を緊縮的にすればよいから、確かにその通りかもしれない。

が、デフレ脱却が金融政策だけでは困難だから大規模な財政出動までもとなると、話は違う。インフレ目標2%達成後にインフレ圧力がかかるとき、そのインフレ圧力は金融政策だけでなく財政政策によっても起こってしまう。そのときには、金融政策だけを緊縮的にしただけでは足らず、財政政策も緊縮にしなければ、インフレ圧力を抑えられない。

出口政策で重大な支障をきたさないために

ところが、今日の財政政策は、裁量的な支出が多いという構造ではない。むしろ、社会保障費や公債費など義務的な支出が多い構造だ。義務的な支出も対前年度比で削減できなければ、財政政策を緊縮的にはできない。高齢化がさらに進む2020年代、社会保障費の増加を少なくすることはできても、前年度よりも減額するように社会保障費を削減することは、政治的には極めて困難なのが実情である。

デフレ憎しとして、インフレ目標2%の達成のために大規模な財政出動まで行えば、その「出口」で重大な支障をきたすことになる。黒田総裁が財政健全化の重要性について示唆してきたのはそうした背景もある。

デフレ脱却さえまだなのに、出口の話をするのは時期尚早というのは、デフレ脱却のための政策を講じる日銀執行部としては、立場上そう言わざるを得ない。しかし、有権者として政策のあり方を考える立場では、時期尚早などと言っていられない。デフレ脱却前とはいえ、出口における財政金融政策をどうするかも、思考停止になってはいけないのだ。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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