2月16日、政府は4月8日に任期満了となる日本銀行総裁に、黒田東彦氏を再任する人事案を国会に提示した。この人事案が可決・成立されると、黒田日銀総裁は2023年4月までの任期となる。
黒田総裁が着任した2013年3月以降、日銀は量的緩和政策の下、日本国債を大量に買い続けた。そして今や、日本国債残高の約4割をも、日銀が保有するまでになっている。
政府が増税を先送りし、かつ国債の大量発行をやめない中、日銀が国債を”ほぼゼロ”の金利で買い増している状態について、日銀は「財政ファイナンス」をしている、と見る向きも多い。「財政ファイナンス」は、政府が意のままに出す財政赤字を、日銀が従属的に穴埋めして資金的に尻拭いする様を表した言葉だ。日銀が国債を買い入れる代わりに現金通貨、つまりマネタリーベース(ベースマネー)を市中に出すわけだから、財政ファイナンスとは、日銀がコントロールすべき通貨価値を、日銀の意思では制御できない状態になることを暗に意図している。財政ファイナンスは学術的には財政赤字の貨幣化ともいう。
望ましくなかった日銀の国債引き受け
財政ファイナンスの最たるものが、国債の日銀引き受けである。しかし、国債の日銀引き受けは、戦後1947年に制定された財政法で禁止されている。国債の日銀引き受けが望ましくないのは、政府が新規に国債を発行して政府支出を行うのと同時に、日銀が受動的に通貨供給を増やさなければならないため、日銀が通貨価値を制御できなくなるからだ。
国債の日銀引き受けを行えば、政府が国債増発と政府支出の金額、さらにそれらのタイミングを決め、日銀は従属的に政府が決めたタイミングで同額の通貨供給を行わなければならなくなる。これでは日銀が金融政策を適時適切に行うことができない。金融政策を司る日銀が国債を保有するとしても、通常は日銀の政策判断で、その金額とタイミングを決めている。
黒田総裁はこれまで、日銀は財政ファイナンスをしていない、と繰り返し述べてきた。それは、異次元緩和でデフレ脱却を目指しているものの、日銀の意思で通貨価値を制御できない状態には決して陥っていないことを示す意味もある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら