ゴルフ「PGAツアー」知られざる生き残り戦略 副社長が語る日本ゴルフ界との連携の狙い

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また、PGATOURは米国外でもカナダ、ラテンアメリカ、中国でも開催しており、ホームページでもその情報を発信している。これらのツアーの上位選手が、PGA TOURの下部ツアーのWEB.COM TOURへの出場権を得られる流れができている。

日本のJGTOの、世界での今後の位置づけがどうなるのか。PGA TOURの一つとして組み込まれる可能性も捨てきれない選択肢であると思う。選手にとっては、ゴルフというスポーツが野球やサッカーと同様にグローバル化し、自分の価値を高めるために、世界ランキングの100位以内の選手が集まるPGA TOURを目指す道が明確に開かれることは良いことである。ツアー選手の集まりであるJGTOとしても前向きに検討するのではと思う。

PGA TOURが今後、目指す方向についてヴォータウ氏は「ツアーのさらなる成長を目指している。成長することで、例えば力を入れているチャリティー活動世界に広げ、子どもたちがゴルフに接する機会を増やしていきたい。子どもたちがゴルフをプレーする機会や、ツアーをテレビや会場で見てもらえれば、ゴルフのファンが増えてくる。世界でゴルフを広げていきたい。特にアジアでゴルフの振興に力を入れていきたい」と米国市場だけでなくグローバルでツアーの発展を目指しているとのことである。

2020年の東京五輪での盛り上がりも確信

東京五輪のゴルフ競技についても「ゴルフが盛んではないブラジルのリオであれだけ成功したので、ゴルフが盛んで、ファンも多い東京では、更に注目されて成功を収めることは間違いないと確信している」と話した。

「Play more, watch more」と日本のゴルフファンへメッセージをもらったが、日本でPGA TOURに高額の放映権料を払っているNHKとゴルフネットワークへの配慮も忘れないビジネスマンの顔も持っていると感じた。インタビューは虎ノ門にあるPGA TOURのアジア支社のオフィスで実施したが、ちょうどインタビュー終了後、アメリカンフットボール(NFL)のスーパーボウルの生中継をしている時間帯だった。インタビューが終わると早速スタッフとテレビ中継に見入っていた。

ゴルフビジネスの中心にいるヴォータウ氏だが、米国人にとってスーパーボウルは特別なイベントであることを改めて感じた。PGA TOURが改革により、2013年からプレーオフの開催を9月に移動したのも、他のスポーツイベントであるNFLやNBA(バスケットボール)との兼ね合いとも聞いている。スーパーボウルへの米国人の食いつきを見ると、大胆に、全体のスケジュールも変えてまで、生き残りをかけるゴルフビジネスの厳しさを垣間見た気がする。

日本の男子ツアーはPGA TOURとの提携を良いきっかけとして、スポーツビジネスの中で自らの立ち位置を明確にしていかなければならない。野球、サッカーや他のスポーツとの競合だけでなく、レジャー産業としても次世代に支持されないと生き残りが厳しいことを強く感じた。

嶋崎 平人 ゴルフライター

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しまさき ひらと / Hirato Shimasaki

1976年ブリヂストン入社。1993年からブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発、広報・宣伝・プロ・トーナメント運営等を担当、退職後、ライターのほか多方面からゴルフ活性化活動を継続。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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