それは軍事使用を前提とした大型オフロードモデルのプロジェクトであった。その取り組みはなかなか芽が出なかったが細々と開発は続けられ、1986年に「LM002」として完成を迎えた。注文生産として1992年まで約300台が顧客の元に渡ったのだ。
LM002は悪路走行を前提とするモデルでありながら、なんとカウンタックから流用したハイパワーのV12気筒エンジンが搭載されていた。主たる顧客は中東の富裕層ということで、インテリアもレザーシートやウッドトリムなどを多用した豪華仕様であった。このコンセプトこそ、まさにSUVそのものだ。今から考えればSUVへの参入は少し早すぎたのかもしれない。
一方、ランボルギーニのマーケティングスタッフは、この事実をウルスのプロモーションで最大限に活用できる。「40年の歳月を経て再び開花したランボルギーニSUVのDNA」というふうに謳えるのだ。ウルスの力強いフェンダーアーチやエアダクトといったエクステリアや直線基調のインテリアには、往年の名車カウンタックだけでなくLM002のモチーフも活かされている。
砂漠におけるパフォーマンスも徹底的に追求した
そういったブランド・ストーリーだけでなくランボルギーニのエンジニアたちは不整地、特に砂漠におけるパフォーマンスも徹底的に追求したようだ。
たしかにチーフ・エンジニアであるマウリツィオ・レッジャーニはここ数年、砂漠によくいた。
彼に連絡すると、「すまない、今、砂漠にいるんだ。ドバイのね」という答えが何回となく返ってきたのを思い出す。「エンジンの形式については大いに悩んだ。しかし砂漠のような路面環境を考えるなら、超低回転域から十分なトルクを生み出すターボ以外には考えられなかった。ターボラグを最小限にするためにツインスクロール・タイプを採用し、その搭載位置も最適化している。自然なフィーリングを重視して機械式のセンターデフも採用しているしね」と、レッジャーニが語る。
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