まずは、ラグジュアリー・カーマーケットを牛耳る北米と中国の顧客ニーズにぴったりと合致したということ。2点目は、セダンのプラットフォームを持つメーカーにとってSUVの開発はそう難しくなく、開発コストも抑えられること。最後に、スタイリングやパフォーマンスなど、セダンと比較してSUVのデメリットがなくなったことだ。
スタイリングにおいてはホイールやタイヤの大型化や、車幅のワイド化が進み、SUVの背の高い“いかつい”存在感が違和感なく受け入れられるようになった。エンジニアリング的にみても、大柄なボディでも軽量化が可能になってきたし、低速における十分なトルクと高回転のハイパフォーマンスを両立できるSUV向けのエンジン特性が主流になっている。
スタビリティ・コントロール(車両安定制御)やABS(アンチロックブレーキシステム)などの電子制御技術が進化したことも大きい。本来、SUVのように車高や重心が高いクルマは、急ハンドルを切った際に、背の低いクルマに比べて不安定な挙動を示す可能性が高い。ところが今は電子制御技術を用いた総合的な挙動コントロールが可能となり、そうした危険は大きく改善された。
大柄なSUVでも通常のクーペやセダンに動力性能の点で、劣るところは少なくなった。さらに加えるならば、少数メーカーしか持っていなかったAWD(全輪駆動)の技術が一般的となり、どこのメーカーも簡単に導入できるようになったということも挙げられる。
「ウルス」の注目度の大きさはこれだけが理由ではない
ただし、ランボルギーニ「ウルス」の注目度の大きさはこれだけが理由ではない。フェラーリとともに希少性と個性を売りとする究極のスーパーカー・メーカーがSUVに乗り出したということが最も大きい。
スーパーカー・メーカーにとってSUVは踏み絵のようなものだ。希少性を第一にする彼らにとって、日常性や実用性は対極にあるものだからだ。セダン系を主力として生産規模拡大へとシフト中のマセラティにとってもSUVへの参入に関しては賛否あり、製品化までには長い時間を要した。そもそも、フェラーリ、ランボルギーニ(ランボルギーニは極少数の例外はあるが)に関しては4ドアモデルすら、存在しない。
非日常性をコンセプトとしているブランドにとってSUVの投入は、そのコンセプトにブレを生んでしまう危険性を持つ。一方、経営目線で考えれば、売り上げの拡大に取り組まないワケにもいかない。フェラーリはこの問題をクリアするため1997年にマセラティを傘下に入れ、フェラーリブランドの希少性を維持しつつ、4ドアのマセラティを増産し生産規模を拡大したくらいだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら