ファンに応援される会社は一体何が違うのか 「ベンチャーウイスキー」社のケーススタディ

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――地元商店の方にも話を伺ってきたのですが、皆さんベンチャーウイスキーを熱く応援していました。

当社では、ウイスキーにおける「メイド・イン秩父」を追求しようと、商品全体の10~15%ではありますが、秩父産の大麦を使用しています。農林振興センターと協力し、シングルモルトに合う麦の品種改良にも努めているところです。また、発酵槽の材料であるミズナラも、地元秩父産のものを使用しようと試みている段階です。

当社が秩父に蒸留所を設置したのは、肥土の出身地ということもありますが、水や自然環境が良く、気候の寒暖差がウイスキーの熟成に向いているからです。

秩父蒸留所で造られた30年モノをファンの方と一緒に飲む、というのが私たちの夢です。秩父には温かい人が多くて、私たちが地元のバーでお酒を飲んでいると、「頑張れ!」と声をかけられる機会が増えました。2017年には市民栄誉賞まで頂戴いたしました。やはり地域の応援というものが、私たちの気持ちを支えていると考えております。

プロのバーテンダーを支援者に

――今後の課題は何でしょうか?

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現在、おかげさまで売れ行きも良く、そのため当社の商品はどこへ行っても品薄で、関係各位にご迷惑をおかけしています。当社の製品にはこだわりのある熱いファンが多いということも心得ておりますが、手に入れたくても買えない状況が続けば、「like」が「hate」に転化する危険性があります。好きだった相手を憎む、という状況は本当に怖いですよね。

ですから、現在の品質を保ったまま生産量を増やしていくことが、当社の1つの経営課題ではないかと思っています。

ベンチャーウイスキー・肥土伊知郎氏の夢と情熱は、プロのバーテンダーたちを支援者に変えてしまった。3年先の樽の先行販売もすごい話だが、吉川さんのようなキャリアを持つ方を広報担当にリクルートできたのは、それを上回る大きな実績ではないだろうか。

新井 範子 上智大学経済学部経営学科教授

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あらい のりこ / Noriko Arai

インターネットやアプリを使ったデジタルなマーケティング、デジタル空間での消費者行動やブランディッド・エンターテインメントを中心に研究をしている。著書に『みんな力』(東洋経済新報社)、『変革のアイスクリーム 「V字回復」を生んだ13社のブランドストーリーに学ぶ』(ダイヤモンド社)などがある。

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山川 悟 東京富士大学経営学部教授

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やまかわ さとる / Satoru Yamakawa

広告会社のマーケティング部門において、広告計画、販売促進計画、ブランド開発、商品開発などに携わった。専門はマーケティング論、創造性開発(プランニング、事業モデル開発)、コンテンツビジネス論。著書に『事例でわかる物語マーケティング』(日本能率協会マネジメントセンター)、『不況になると口紅が売れる』(マイコミ新書)などがある。

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