「30歳目前の銀行員」が転職を決めた真の理由 マイナス金利やAIのせいだけではない

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高いブランド力を持つA社だが、金融業界と比べると。業界の給与水準は低い。それでも田島さんはA社への入社を決めた。1つが、将来の起業を見据え、「事業会社」での経験を積んでおきたい、と考えたからだ。扱っている商品が好きで、いい商品を自分の手で世の中に広げていけることにも、やりがいを感じた。

もう1つが自分の時間がほしかったこと。銀行での仕事は、年次を重ねるにつれて、ハードになってくる。新しい環境ならば、そうした厳しい業務から解放され、残業時間をはじめ、自分に余裕が生まれることも大きかったという。

現在、田島さんは、小売店やコンビニエンスストアなどへの提案・交渉を担当している。有形の商材を扱うのは初体験であるため、棚割りや什器の配置など、新しく覚えることは山ほどあるが、顧客に対して収益の分析・提案を行う際、銀行での経験が活かせているという。それは「数字がわかる」という点。ほかの同僚よりも一日の長があり、所属する部署の数値目標を設定するときなどにも、田島さんの知見が頼りにされている。

営業での経験を積み、将来は経営企画など、本社の管理部門への異動も視野に入れているという。

コンサルや不動産で銀行の人材が求められる

銀行に勤務する人たちが転職を考えた場合、「同じ金融業界」か「事業会社の経理・財務」が主な行き先だ、と思っている人は多いだろう。だが実際、銀行出身者は、実に多様な業界・職種からの求人であふれいてる。

銀行出身者の転職状況を2年前と直近で比較しても、金融業界への転職が大きく減る一方、コンサルティング会社を筆頭に、建設・不動産、人材・教育、電気や電子、機械などのメーカー、IT・通信などへの転職が増えている。田島さんのようにまったく異業種の営業に転身する例も少なくない。

以前から、転職市場では銀行出身者を高く評価する傾向が見られたが、最近では、銀行出身者を「狙って」、採用活動を行っている企業も出てきている。

多様な業界が銀材人材に期待を寄せるのは、主に次のポイントになる。

・数字の管理・分析に強く、緻密な作業ができる
・融資営業なら経営者層と、リテール営業なら富裕層との折衝力を身に付けている
・財務諸表を読み解くことができる
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