「とみ田」のつけ麺にこもる挫折とこだわり

圧倒的支持の裏には店主の紆余曲折があった

インターネットが少しずつ普及し始めた頃で、開店当初から話題となった。開店日から20~30人の行列ができ、「ズームイン!!朝!」などテレビ取材も来て、人気は一気に加速した。

開店当初のラーメン・つけ麺は「大黒屋本舗」の昼に提供していた大勝軒系を少し濃くしたもの。これが現在のようにだんだんと濃くなっていくのだが、そのきっかけは「六厘舎」の濃厚豚骨魚介つけ麵。これに衝撃を受け、改良を始めて今の「とみ田」のつけ麺が生まれた。

いちばん美味しいと思うものを食べてほしい

特にスランプというスランプもなくここまで来た「中華蕎麦 とみ田」だが、富田氏は味を常に変え続けている。富田氏が毎日ブレンドする濃厚な豚骨魚介スープ、ピシッと向きの揃った自家製麺。締めのスープ割は、今年1月の店舗リニューアルを機に高級煮干スープに変更した。

「自分がやりたいことは素直にやりたいんです。自分が今いちばん美味しいと思うものを食べてほしいんですよね」(富田氏)

厨房に立つ富田氏(筆者撮影)

富田氏は開店から一貫して自ら厨房に立ち続けている。「旬の味」を常に出したいからだ。

「会社として大きくなっていくのはもちろんいいことですが、厨房には常に立ち続けたいです。この気持ちがぶれたらダメだと思っています。営業時間中は『ラーメン屋のおじさん』でいないと」(富田氏)

リニューアルで客席を減らしたのは、お客さん1人ひとりともっと向き合うための決断だったという。田代氏から学んだ「ラーメンは味半分、人柄半分」という理念は今も忘れない。

「おカネを払って美味しいのは当たり前で、そこに+αの付加価値がなければ続かないと思っています。マスターが大事にしてきたように、人との触れ合いを本当に大事にしています」(富田氏)。

これからの課題はやはり後継者だ。

「味」(レシピ)は決まったものを教えればそれで済むが、それ以外の「人柄」の面をどう教育できるかが重要だという。お客さんと向き合う姿勢、商売の基本をどう教育するか。

富田氏は挫折の中で師匠の背中を見ながら学んだ。これをどう弟子たちに伝えていくか。決して簡単ではない問いの答えを探して模索は続く。

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