「とみ田」のつけ麺にこもる挫折とこだわり

圧倒的支持の裏には店主の紆余曲折があった

一方、富田氏は大勝軒の伝統メニューであるつけ麺をこよなく愛しており、他のメニューに手を広げることには賛成ではなかった。

中華蕎麦 とみ田の外観(筆者撮影)

当時、茨城の2大巨頭として、「茨城大勝軒佐貫本店」と双璧を成す人気店があった。富田氏はその店に通うようになる。家族経営で、ひとつのレシピをずっと守っていくような店。その店主から誘われ、富田氏は店を移った。

ところが、思ってもみない問題が起こる。入社時に約束された給料は支払われず、仕入れに使っている車のガソリン代しかもらえない日々が半年続いたのだ。ラーメン作りを自分のものにしたい富田氏はそれでもがむしゃらに働くが、その後、人間不信に陥ってしまう。

味だけでなく人柄も大事だと気付いた

やむなく退職し、路頭に迷っていると、噂を聞きつけた田代氏から「うちに戻ってこい」と再び声をかけられる。富田氏は再び、田代氏の店で働くことになった。辞めた店には田代氏が一緒に頭を下げに行ってくれたという。

「ラーメンは味だと思っていたけど、人柄も本当に大事なんだなとそのとき感じました」(富田氏)

この思いは「東池袋大勝軒」の山岸さんが背中で語ってきた「ラーメンは豚ガラ、鶏ガラ、人柄」という教えに自ずと繋がってくる。

田代氏のもとに戻った富田氏は松戸の地で「大黒屋本舗」の店長を任される。昼は大勝軒系、夜は二郎系のラーメンを出す“二毛作”草分けの店だ。

ここに、グループの次期店長候補が研修に来るようになる。ただ、富田氏のここにおける再起動は決して順風満帆には進まなかった。富田氏は厳しい指導を行って何人も辞めさせてしまったのだ。ラーメンに真っすぐだったからこそ、という見方もできるのだが、富田氏は、このままでは田代氏の役に立てず、理想も貫けないと判断。田代氏と相談し、「大黒屋本舗」を閉店し、そのまま権利を買い取って独立することにした。

こうして2006年6月に「中華蕎麦 とみ田」が誕生した。

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