リーマンショックは世界経済に大きな負のインパクトを与えたが、中国はこれによる経済の落ち込みを回避するため、4兆元(約6000億ドル)の経済刺激策をとった。この額は、07年から10年への米国経常収支赤字の減少(4187億ドル)より大きい。中国の経常収支黒字が08年から09年にかけて1773億ドル減少したのは、このためだ。
つまり、世界経済全体として見れば、中国の景気拡大策のために大きな需要減を免れることができたのだ。それによってとくに大きな恩恵を被ったのが日本経済である。
ところが、それが11年頃に終了した。これは、中国の経常収支黒字がほぼ一定のレベルになり、12年から13年にかけては若干増加したことに表れている。
以上のような世界経済の需要変動に、日本は積極的な政策対応をせず、受動的に対応した。
まず、米国の赤字が拡大していく過程では、自動車を中心として輸出が増えた。このメカニズムは、円キャリー取引および円安の進行と対をなしている(これについては、拙著『経済危機のルール』東洋経済新報社、第5章を参照)。
ところが米国金融危機で、自動車を中心に輸出が減少した。資本収支の面では、円キャリー取引の「逆戻し」現象が生じ、円高が進行した。
日本の政府支出は増加しているが、このうち政府消費は主として医療費であり、政策的な拡大というよりは自然増的な性格が強い。また、民間消費は、他の項目が減少しているために受動的に構成比が上昇しただけであり、名目ではむしろ減少している(実質消費は、デフレーターの低下により増大している)。
日本経済の対応は、主として、経済の停滞ないしは縮小によってなされた。12年の実質GDPは、07年より約1%少ない。
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