その主因は、世界的なIT関連需要の強さだ。従来の一部スマホ(新製品に伴う超短期サイクル)にとどまらず、第4次産業革命の波は人手不足と省力化の対応策も手伝い、AI(人工知能)活用、IoTやFA等でクラウド需要の裾野はかなり広がっている。デジタル経済が浸透し、IT企業(特に米国)の業績拡大は目を見張るものとなった。グローバルな質的変化のもと、新興国景気も持ち直し、世界各国で同時回復が進んだ。
その一方で、ネット普及は誰でも簡単に欲しい物を最安値で買える仕組みを提供し、価格上昇の阻害要因にもなった。さらにはシェアビジネスやAIなどの技術革新も重なり、古いビジネスモデルの賃金を抑制し、グローバルな低賃金をもたらしている。この潮流は2018年も続くことが見込まれよう。質的変化を踏まえれば、回復期間の長さから先行きの下振れリスクを論じる意味は薄れる。
中長期の政策金利は3%に引き上げの可能性も
ただし、昨年来のゴルディロックス相場、その前提にあった米国の低金利水準が変化しつつあるのも事実だ。賃金の伸び悩みのもと、米国の長期金利が上昇しない、3%を超えないというシナリオは揺らいでいる。
1月31日発表のFOMC(米国連邦公開市場委員会)声明文で、「物価上昇率は今年上昇」「一段の緩やかな利上げ(further は2カ所に登場)」と表現が変更された。3月利上げの宣言だけでなく、物価次第では年4回の利上げの可能性も十分あり得ることを示唆。それと同時に、米国債の増発計画が発表されたのを受けて、米30年債は3%、米10年債は節目の2.75%を上抜けた。その後の株価急落があっても、この水準を維持している。この水準変化について、「金融政策の正常化」を先取りした短期筋の勇み足だとは言えない。
米1月雇用統計では、時間当たり賃金が前年比プラス2.9%と市場予想を上回ったことが市場で注目されたが、天候要因で上振れたと見る。筆者は昨年9月分がハリケーンの影響を受けて歪められた経験から、1月分には大寒波の影響が出るとみていた。次回2月分(3月9日発表)では、天候要因が剥落し、伸び率が鈍化する可能性が高い。単月の振れを伴うが、それでも賃金の先行指標としてFRBが重視する雇用コスト指数が上昇トレンドにあり、物価が上昇軌道にあるとの判断は、変わらないだろう。
NY連邦銀行のダドリー総裁は7日、米国株急落を「さほど大きな衝撃ではなかった。株価水準は昨年よりも高い」と語り、利上げ継続を示唆した。3月利上げは既定路線にあるとみる。また3月FOMCでは、中長期の政策金利見通し(ドットチャート)の中央値が3.00%(前回2.75%)に上方修正される可能性はあり、注意したい。
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