筆者は前回執筆記事「2018年の心構え、原油とユーロを追いかけて」で、2018年のテーマは「日米欧の金融政策の正常化」と「世界経済の回復持続力」との2つと指摘した。
前者では、2日の米1月雇用統計発表後の米長期金利の上昇加速をきっかけに、NYダウが大幅下落。1月26日の日中高値2万6616ドルから2月9日の日中安値2万3360ドルまで10営業日で12%も下落する急激な調整となり、米国発の世界同時株安を招いた。根底には低いボラティリティに対する過信があり、リスク資産のポジションが積み上がっていたと思われる。2018年の株式市場は戌の大笑いで始まったが、1カ月後に叱られて半泣き状態。ここもとの値動きの荒さから、市場が落ち着きを取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。
先行きを不安視する声も出始めたが、心理的な冷え込みはあっても、後者の世界経済の緩やかな回復、好調な企業業績が数週間の金融市場の混乱で急変するものではない。過去の経験から、目先はマインド関連指標のようなソフトデータが多少は鈍化しても、すぐには生産や消費、設備投資のハードデータに大きな影響は及ばない。
株価は調整も、堅調な経済は持続
具体的には資産価格の急落(資産効果の剥落)により、一時的に消費が弱まることがあっても、先行きは下振れるという見方から、足元で旺盛な半導体需要の受注がすぐに取り消される状況には至らないだろう。堅調な経済が持続するならば、結果として株価は健全な調整をこなしたことになる。またリーマンショック時と比べても、日米独の民間債務は積み上がっておらず、行き過ぎた信用拡張が起きているわけではない。
1月22日発表のIMF(国際通貨基金)世界経済見通し(改訂)では、世界全体の成長率が2017年プラス3.7%、2018年プラス3.9%、2019年プラス3.9%と3ヵ月前比で2017年は0.1%ポイント、2018年と2019年は0.2%ポイントずつ上方修正した。2016年半ばに始まった世界経済のモメンタムは力強さを増し、今後2年も4%近辺を維持できるという。
かつて2000年代前半(2001年12月に中国がWTOに加盟後)に、中国が主導する新興国台頭の流れで、世界全体の成長率の良し悪しの分岐点が3%台から4%にシフトした。その当時を彷彿させる動きに足元は転じつつある。昨年の今頃は、米国自動車販売の鈍化が懸念され始め、まだ長期停滞論が唱えられていたことを思えば、世界経済は2017年に明らかにステージが変わった。
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