服の手入れ具合、シャツの色合い、ネクタイの模様、メガネの色、ヘアスタイル、どれもパーツで見ればすてきに見えるのに、トータルに見ると「あれ? おかしい」と思うことが出てきます。自分では気づかないかもしれませんが、人の“装い”を見て「あのネクタイおかしい」「メガネの色が強すぎる」など、何か違和感を持ったことがある方も多いと思います。
考えてみれば当然なのですが、意外に意識が回っている人はいません。まずは、このように隣の机の人と話をするときと、人前でプレゼンするときの「見え方」は違うということを知りましょう。
毎日、全身鏡のススメ
さて、多くの人に見られている“あなたの3メートル離れた姿”は、どのように整えていけばよいのでしょう? iPhoneアプリで…アンドロイドアプリで…いえいえ、そんな最新技術はいりません。アナログで地味ではありますが、ここであなたを支えてくれるのは“全身鏡”です。
みなさんのご自宅には“全身鏡”はありますか?パウダールーム、バスルーム、クローゼットなど、上半身が見える鏡は一般的ですが、全身鏡をお持ちの方は(特に男性は)そう多くはないでしょう。しかし、“装い”の基本は、全身鏡です。多くの場合、上半身鏡で確認した部位以外のところを見られるからです。
わたしのお勧めは、とにかく毎日外出する前に、“全身鏡で自分を見る習慣をつけること”です。シンプルですが、女性はともかく、男性は抵抗感があるかもしれません。見てもよくわからない、という方もいるでしょうが、それでも毎日試しに見ることです。毎日繰り返すことで、観る目はかならず鍛えられます。
たとえば、ヘアスタイルとスーツのバランス。細身の英国風スーツ(これは今秋から流行ります!)に、ボリュームのあるヘアスタイルはバランスが悪いです。短く整え小さくまとめることで全体がスッキリと見えます。
また、色については、どれくらいの強さの色でどれくらいの量がよいのかは、全身鏡でこそ見ることができます。単体で見ると品のよいきれいな色でも、ネクタイのように見た目の量が少ないアイテムでは、全身で見たときに印象がぼやけてしまう、といった点が見るべきポイントです。
コーディネートは奥様や恋人にいつも選んでもらっているよ、という方もいるでしょう。しかし、わたしは最終的にご自身で判断されるようになることをお勧めします。なぜならば、女性には、女性ならではの好みがあるので、かわいいものやきれいなものを選んでしまいがちです。それらのものは、あなたに似合ったとしても、あなたの仕事場の“戦闘着”にはならないかもしれません。
わたしは“装い”をまとうことは、自分のイメージ(または、自分がなりたいイメージ)をまとうことだと考えます。男性社会には男性社会にふさわしいものがあるので、男性社会の空気感をつかんでいるご本人が選ばれるのがいちばんだからです。
宮崎氏はファッションのバランスについて、次のように著書で言っています。
「気をつけなければいけないのが、全体的に整っているかどうかということです。表面上だけ取り繕っているというのは、相手に伝わってしまうものです。たとえば、せっかくスーツはキレイなのに靴の手入れがされていないとか、スーツは高そうなのにシワがあるという場合、何か違和感を覚えてしまうことはありませんか。そういったアンバランスな部分に、その人の心の余裕のなさが表れてしまうのではないかと私は思います」(『世界一のおもてなし』新人物往来社)。
「表面上取り繕う」「何か違和感」「アンバランス感」……そういった要素は、一流の現場でたくさんの人に触れてきたからこそ、感じられていることなのだと思います。外見を見るだけで、内面の心的な部分も、一流の目を持った人にはわかってしまう、そういうことなのではないでしょうか。
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