アップルがバッテリー情報を隠してきたワケ 「それによって数十億ドルを稼ぎ出した」

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 1月24日、米アップルは、iPhone(アイフォーン)のバッテリー劣化に伴う動作速度低下問題について、次の基本ソフト(OS)更新時にバッテリーの状態を知らせる機能を付加すると発表した。写真は北京のアップルストアで撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

[24日 ロイター] - 米アップル<AAPL.O>は24日、iPhone(アイフォーン)のバッテリー劣化に伴う動作速度低下問題について、次の基本ソフト(OS)更新時にバッテリーの状態を知らせる機能を付加すると発表した。これは携帯端末ユーザーに直接そうした情報を伝えるのを拒んできたアップルの方針が転換することを意味する。

アップルによると、新たなiOSはバッテリーの「健全度」や、交換が必要かどうかを表示する。またユーザーは、バッテリーに問題がある場合に意図的に動作速度を遅くするソフトウエアの稼働を止めることも可能になる。

昨年12月にアップルはこの意図的な動作減速の仕組みがあることを認めて謝罪し、対象となるアイフォーンのバッテリー交換費用を79ドルから29ドルに引き下げた。

ただ批判派は、消耗したバッテリーが十分な充電をできなくしただけでなく、アイフォーンの動作まで遅くしてしまった事実をあいまいにしたため、ユーザーはバッテリーを交換する代わりに新機種を購入してしまったと指摘する。

アイフォーンの修正に関する書籍の出版や交換部品販売を手掛けるiFixit(アイフィクスイット)のカイル・ウィーンズ最高経営責任者(CEO)は「アップルは問題がさもバッテリーの消耗ではないようなふりをして、それによって数十億ドルを稼ぎ出した」と苦言を呈した。

アップルは、セキュリティー上の理由からアップストアでバッテリーの健全度を示すアプリを販売するのを禁止してきた。2016年のソフトウエアの更新後にはチャージサイクル数、つまりバッテリーの充電量が何回ゼロになって再充電されたかという重要な情報をアプリで表示することは認められなくなっている。

リラム・ラブスのロジェリオ・ヒロオカ氏によると、同社が提供するアプリは16年にチャージサイクル数を表示できなくなり、バッテリーが寿命を迎えたかどうかを判断する機能だけが残った。昨年12月にアップルが動作速度を意図的に遅くしたと認める直前には、アプリに対する通常のバグ修復も拒絶され、アップル側は不正確な診断機能が提示される恐れがあるためとの理由を挙げたという。

一方でアップルのパソコン「Mac」に関しては、バッテリーの健全度をずっと簡単に検査できる状況にある。アップルは、なぜアイフォーンとMacにこのような差が存在するのがについてコメントを拒否した。アイフィクスイットのウィーン氏は「Macでは(バッテリー健全度が)分かるのに、アイフォーンに関しては秘密というのは正気の沙汰ではない」とあきれている。

更新されたiOSを入手するまでは、自分のアイフォーンのバッテリーがどんな具合かを調べるには端末をアップルストアに持ち込むか、Macに接続して他社製の診断ソフトを稼働させるしかない。

アップルや他のハイテク企業は、ユーザーがバッテリー情報にアクセスして交換するのを難しくしていると長らく非難を浴びている。いくつかの州でアップルは、独立系修理店への部品卸売りを義務付ける「修理する権利」を認める法案への反対運動も展開している。

(Stephen Nellis記者)

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