東芝が振るうテレビ再生の大ナタ カギは工場集約と事業分離
これまで田中久雄社長は「テレビで培った映像技術は医療分野などに応用できる」と強調し、テレビ事業からの撤退は言下に否定を続けてきた。それだけに、今回の事業切り離しは思い切った決断に見える。映像技術の開発体制も子会社へ移してしまうため、医療など他事業との連携はスムーズに進めることはできるのか、という疑問も付きまとう。
もちろん、テレビと家電の事業一体化はメリットもある。家電量販店への営業は、これまで冷蔵庫や洗濯機の白モノ家電部門と別に動いていたが、これを一体化するだけでも効率化が期待できる。ただし、東芝の家電事業は12年度の売上高が5915億円、営業益は24億円であり、構造改革で身軽になるとはいえ大所帯のテレビを支えきれるのか。収益改善に向けてテレビの販売台数を削り続けると、その先に待ち受けるのは縮小均衡でしかない。
立て直しのハードルは高い
2期連続の赤字となったデジプロ社の立て直しについて、田中社長は「世の中で黒字の会社がある以上は、やり方さえ変えればできる」と、強気の姿勢を崩さない。テレビは事業分離による効率化を推し進める一方、パソコンはこれまで手薄だったBtoB分野を強化するという方針の下、本社部門に温存して黒字化を図る。
しかし、テレビに限らずパソコンも、世界的に熾烈な競争が繰り広げられている苦しい市場。すでにライバルの日立製作所は両事業から事実上撤退し、社会インフラ事業へ舵を切っている。「テレビとパソコンはブランド力の向上に大きな意味を持っている。事業が悪いときは、ほかで支えることが東芝の強み」と田中社長は訴えるが、どこまで事業のシナジーとコストのバランスを保ち続けられるのか。
「田中さんにはもう一度、東芝を成長路線に戻してほしい」と、西田厚聰会長の期待を背負って6月に社長に就任した田中社長。その期待にどこまで応えることができるか。新体制の下で改革の第一歩が動き出した。
(撮影:尾形 文繁)
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