激化する「米中海戦」、日本はどう処すべきか

米中が繰り広げる「温かい戦争」の実態とは?

そのような中で、地域の安定と海洋の秩序回復のために日本が果たすべき役割は大きい。そもそも、日本は地理的に、中国の海洋進出の直接的な影響を受ける数少ない国の1つである。国土の東西に海のあるロシアなどとは異なり、中国の海洋進出は必然的に東の海に向かう。つまり日本は、海洋進出を狙う中国にとって正面に立ちはだかっている壁のような位置にあるのだ。

本書の第5章でも紹介されている、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した2010年の事件や、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射した2013年の事件は、今も記憶に新しい。では、こうした東アジアの海における中国の動きに対して日本はどう対応すべきか。本稿では、3つの点に絞って述べていきたい。

中国は力の空白に乗じて南シナ海に進出している

第一は、日米同盟の強化である。日米同盟は海洋国家の同盟であり、また日本の安全保障の基軸をなすものである。海洋の自由は、日米両国の共通利益である。このことが変わることはないし、今後も日本がこの地域におけるアメリカの最重要パートナーであり続けるということにも変わりはない。

では、日米同盟の強化として何をすべきか。南シナ海の歴史をさかのぼれば、中国は力の空白に乗じて南シナ海に進出していることがわかる。1950年代、フランスが東南アジアから撤退した後、中国は西沙諸島の半分を占拠し、1970年代にアメリカが南ベトナムから撤退すると、西沙諸島全域を支配した。1980年代にはベトナムにおけるソ連軍の縮小の後、南沙諸島に進出し、1990年代にはアメリカ軍がフィリピンから撤退した後にミスチーフ礁を占拠、さらに2000年代には南シナ海南部に進出している。

本書ではその後、すなわち2000年代以降の中国の海洋進出が描かれているが、なかでも第9章に詳しく書かれている南シナ海の状況と比べれば、尖閣諸島を含む東シナ海では、中国の行動は不当なものではあっても、烈度は相対的に低いように見える。

それは、東シナ海においては海上保安庁と自衛隊、そしてその背後にはアメリカのプレゼンスがあるからである。重要なのは、今後も引き続きすきを作らないことだ。日本はアメリカ軍のプレゼンスの強化をしっかりと支え、また、日本自身の体制も強化していかなければならない。

今、アメリカ側のトップにいるのはトランプ大統領である。そのトランプ政権の安全保障政策は、これまでの歴代政権がとってきた同盟重視の政策に回帰しつつあるとみてよい。2017年12月18日に発表されたばかりの国家安全保障戦略でも、トランプ政権は「同盟諸国とパートナーは、アメリカの偉大な強みである」としている。

本書では、オバマ政権における親中路線と対中強硬路線との対立が描かれているが、歴代政権を振り返っても、アメリカの対中政策は1つの政権内で融和路線から強硬路線へ、そしてその逆へと大きく振れることも珍しくない。トランプ政権もまた融和一辺倒でもなければ強硬一辺倒でもないであろうが、戦後アメリカを中心に築かれてきたリベラルな国際秩序に対して中国が挑戦し、その一端が東アジアの海において表れているという現実を前にして、海洋国家アメリカが進むべき方向性はおのずと明らかである。

第二に、海洋安全保障のための日本の能力強化は必須である。それは、日米同盟強化の前提とも言える重要事項である。日本周辺の海空域の安全確保、島嶼部の防衛、海上交通の安全確保などのために、防衛力を総合的に充実させていくことは急務である。

また、海洋安全保障の強化のためには、防衛力だけではなく、海上保安庁の能力と態勢、そして自衛隊と海上保安庁の連携のさらなる強化も必要である。日本の海上保安庁は海における警察機関であり、軍事的な役割を果たす組織ではない。しかしながら、中国における海上保安庁に相当する機関、海警局は、海における警察機関であるだけでなく、中国人民解放軍の海軍を補完する準軍隊であると考えられている。

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