激化する「米中海戦」、日本はどう処すべきか

米中が繰り広げる「温かい戦争」の実態とは?

漁船衝突時の映像が、「sengoku38」によってYouTube上に流出した「尖閣諸島中国漁船衝突事件」。写真は、海保による現場海域での検証の様子(写真:Photoshot/アフロ)
1月11日、中国海軍の原子力潜水艦が尖閣諸島沖の接続水域を潜没航行し、日本政府が中国へ抗議する事態となった。年々エスカレートしている中国の海洋進出。その驚くべき実態を描いた本『米中海戦はもう始まっている』(原書名:CRASHBACK)が発売された。
「米中は現在、西太平洋上で戦争状態にある」という一文で始まる本書は、東シナ海や南シナ海で起きた米中海上事件の知られざる全貌を描き出している。中国機に体当たりされた米軍機が操縦不能に陥った「海南島事件」や、米軍艦が公海上で中国船団に包囲された「インペッカブル事件」など、衝突事件の現場では唖然とするような事態が起きている。
本書を、初代の防衛審議官を務めた德地秀士氏が読み解いた。その解説の全文を掲載する。

中国―アメリカ間でこの15年に起きた海上事件の数々

中国は領土の防衛、台湾の独立阻止、独自の領有権主張の強化といった目標に加え、天然資源などの海洋権益獲得、海上交通路の確保などを目標に、東シナ海、南シナ海、そしてインド洋やさらにその先まで海洋進出している。本書で描かれるのは、そうした進出を続ける中国と、アジア太平洋地域という、海を主体とする広大な地域でプレゼンスを維持するアメリカとの間で実際に起きた、この15年ほどの非常に緊迫した海上事件の数々である。

本書のタイトルは『米中海戦はもう始まっている』だが、序章ではっきりと述べられているように、これは「温かい戦争」という新しい「戦争」の形を指している。かつてアメリカとソ連の間で繰り広げられた「冷たい戦争」では、アメリカはソ連を封じ込め、孤立させることによって崩壊に導くことを戦略としていたが、今の中国に対してそのような戦略をとることはできない。

それは、中国が世界第2位の経済大国となり、アジア太平洋地域の経済が中国をハブとしているからというだけではない。グローバリゼーションは国際社会をボーダーレスな「地球社会」に変化させつつある。その「地球社会」におけるグローバリゼーションの負の側面(たとえば国際テロ、海賊などの非伝統的な課題)に対応するうえで、中国はアメリカにとっても重要なパートナーになっているのである。たとえば、アフリカのソマリア沖アデン湾においては、中国も日米をはじめとする多くの国々の海上部隊とともに、海賊対策の任務に当たっている。

その一方で、中国は国際社会の確立されたルールを無視して、海洋進出をエスカレートさせている。本書は、海上における米中衝突の事例を具体的に描くことで、そうした「温かい戦争」の実像を示してくれる、優れたドキュメントだ。

2017年10月に開催された中国の第19回共産党大会の政治報告において、習近平総書記は、「南シナ海における島嶼の建設」や「海上の諸利益の擁護」を過去5年間の成果として挙げ、また中国軍を「今世紀中葉までに世界一流の軍隊にするよう努める」とした。

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