新しいコンピテンシーとは何か
こういった学び方の奥には、ある背景が見えてくる。個人に求められるコンピテンシーが変わってきているという点だ。その変化を押さえておけば、ラーニングの未来も見えてくる。
過去と現在の環境で、もっと違う点はなにか、やはり情報や知識へのアクセスのしやすさが挙げられる。昔はホワイトカラーが使っている時間の4分の1が情報の検索時間で、その結果として入手した情報の半分は役に立たない、という冗談のような結果があった。でも今は違う。
ネットやさまざまなITツールを介在させることで、どこで知識や情報を得られるのかはすぐにわかる。さらに、そういった知識や情報を入手するのに時間もおカネもかからない。もっと知りたければ、その道の専門家が誰なのかすぐに調べることができるし、実際にその人に話を聞くといったコミュニケーションもとりやすい。
こうした知識やスキルのコンビニ化、つまり、いつでも、どこでも、誰でも知識に簡単にアクセスできる時代において、もはや、何かを「知っている」こと自体の価値はあまりない。技術者や生産管理のプロは別として、社内にいる「俺はこの道で20年やってきた」という自信を持っている人の多くが、社内レベルの一流であり、世間でパフォーマンスを発揮できるレベルにない現実がある。
知識のストックに価値がある時代であれば、すでに持っている知識を出し惜しみする、もしくは他の人の手に入らないように守ってさえいれば、ご飯は食べていけた。でも今や知識の減価償却は驚くほど早く、あっという間に商品価値がなくなっていく。
知識を抱え込むのではなく、意図的に発信せよ
やはり、これからは知識をストックするのではなく、フローさせる仕組みやフローを維持できるネットワークを、いかにしっかり築けるかが問われている。誤解ないように言っておくと、「この領域といったら○○さん」とタグづけができる高い専門性はこれからだって増々重要だし、そもそも専門性がないとネットワークにすら入れてもらえないというのが現実なのだが、その磨き方が、これまでのように個人でコツコツと積み上げる(経験曲線)というよりも、周りの人とのネットワークの広がりによって向上する(コラボレーション曲線)ということだ。
もはや知識は抱え込むのではなく、意図的に発信していく。そうして情報を放せば放すほど、ネットには転がっていない、お互いの信頼関係からしか手に入れられない生の知識・情報が入手でき、結果的にその人の価値・信用度(クレジット)が上がっていくことになる。
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