安倍首相の3選戦略と「ポスト安倍」の暗闘 消化試合の裏で「次の次」をにらむ神経戦へ
国政選挙が予想されない2018年政局の最大イベントは、9月に予定される自民党総裁選だ。ただ、昨年9月末解散断行、10.22衆院選という大博打が図に当たって1強を維持・強化した安倍晋三首相の「3選」は既定路線で、永田町スズメの興味は「対抗馬にどれだけの差をつけて勝つか」(細田派幹部)に集まる。
石破茂元地方創生相、野田聖子総務相が出馬に意欲満々だが「出ても勝機はない」(自民幹部)のが大方の見立て。「最有力候補」とされながら様子見を決め込む岸田文雄政調会長に「禅譲狙いでの不出馬説」がつきまとう現状からも、6年ぶりの総裁選は首相の史上最長政権を前提とする消化試合の様相を濃くしている。
ただ、「次の次」を視野に入れる河野太郎外相や若きスーパースターの小泉進次郎筆頭副幹事長の動きも含め、ゴールが定まらない「ポスト安倍」をめぐる熾烈な駆け引きは年明けからひそかに始まっている。
野田氏念頭に「われこそはと手を挙げて」と首相
二階俊博幹事長や菅義偉官房長官が「3選支持」で石破氏をけん制する一方、野田氏に出馬を促すような首相発言の裏には、反安倍勢力の分断による石破潰しの思惑もにじむ。ここきて、岸田氏が首相の後見人を自任する麻生太郎副総理兼財務相と密談したのも「消化試合の裏側での神経戦」(自民長老)とみられている。首相の出馬表明が予定される初夏に向け、水面下での権力闘争が本格化しそうだ。
総裁選をめぐる党内実力者の思惑を浮き上がらせたのは首相自身の発言だった。1月12日からバルト3国など東欧歴訪中の首相は15日夕(日本時間)の同行記者団との内政懇談で、総裁選を軸とする今年の政権運営にやや踏み込んで言及した。首相はまず「(総裁選への対応は)雪が解けて、木々の芽が吹き出す、そして緑が深くなってきた頃に考え始めなければいけないかと思う」と語った。
年明けから繰り返している「セミが鳴くころ」の言い換えともみられているが、通常国会の大幅延長も予想されるだけに、国会会期と関連させず、新緑が深緑に変わる6月中下旬の出馬宣言を暗示したと受け止められている。
その上で首相は、「自民党には人材が雲霞のごとく存在するから、閣内にあろうがなかろうが、われこそはと手を挙げていただければいい」と笑顔を浮かべた。岸田氏と共に首相と当選同期で総裁選出馬を目指す野田氏を念頭に置いた発言だ。2015年総裁選では、最後まで出馬に向けて推薦人集めに奔走した野田氏を「党内工作で出馬させなかった」(自民幹部)のとは対照的に、「今回は出てもいいよ、という意味」(細田派幹部)なのは明らかだ。もちろん、国政選挙5連勝による3選への自信の表れではあるが、首相の強かな総裁選戦略も垣間見せた発言である。
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