安倍首相の3選戦略と「ポスト安倍」の暗闘

消化試合の裏で「次の次」をにらむ神経戦へ

当の野田氏は、一連の首相発言について「しっかりと総裁選を進めていこうという決意の表れ」としながらも、20人の推薦人確保については「今回は150%」と強い自信を示す。総裁選を仕切る立場の二階幹事長から「あえて出るだけではしょうがない」とけん制されても、野田氏は党内の一部でささやかれる石破氏との候補1本化の可能性を「ありません」と明確に否定し、自らの出馬には、(1)無投票回避、(2)多様性アピール、(3)女性活躍推進、の「3つの『義』がある」と胸を張る。

他方、岸田氏周辺では主戦論と自重論が交錯する。年明けに掲載された大手紙の総裁選絡みのコラムで「『次の次』に『次』はない」と揶揄されて、議員を辞めてからも岸田氏の後見人とみられている古賀誠元幹事長が「総理総裁を目指すなら派閥として堂々と戦うべきだ」と派内の若手議員にハッパををかけている。

その一方で、党・内閣の要職にある岸田派幹部は「あえて首相を敵に回す必要はない」と及び腰だ。総裁選後の人事で冷遇されるのを恐れているからだ。岸田氏自身も、いわゆる「加藤の乱」で同派が分裂した経緯を振り返り、「勝てない戦はするべきでない」と周辺に語ったとされるが、派内には「あいまい戦術は首相の思うつぼ」(若手)との不満も広がる。

麻生・岸田の「大宏池会構想」に首相は?

そうした中、岸田氏は首相発言に合わせたように麻生氏と二人だけで会談した。持ち掛けたのは岸田氏とされ、どちらも会談内容には口を閉ざしているが、互いに総裁選への対応を探ったのは間違いない。もともとは宏池会(現岸田派)所属だった麻生氏は、谷垣禎一元総裁が率いた谷垣グループも含めた「大宏池会構想」をぶち上げたこともあり、首相サイドも「キングメーカー狙いの麻生氏のかく乱戦術では」(側近)と疑心暗鬼だ。

首相は内政懇談で「自民党には老壮青それぞれの世代に有力な人材がいる。若い人たちもその時期に備え、経験、実績、見識を培ってもらいたい」とも語った。河野氏や小泉氏を念頭に置いた発言とされ、「3選後は大胆な世代交代を進める意向を示唆した」(自民幹部)と受け止める向きも多い。

無派閥ながら内閣の大番頭として首相を支える菅官房長官は一連の首相発言を受けて出演した民放テレビ番組で、改めて首相の3選支持を明言するとともに、河野氏についても「外相に専念したいのでは」と解説した。昨年8月の内閣改造で首相に河野氏の起用を強く進言した菅氏は、ここにきて周辺に「ポスト安倍は河野」と漏らしたとされる。河野氏は、父親の河野洋平元衆院議長の側近だった麻生氏が率いる麻生派の一員だが、同時進行となった菅発言と麻生・岸田会談は「最近折り合いが悪い麻生、菅両氏のポスト安倍をめぐる主導権争い」(自民長老)との見方も広がる。

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