安倍首相の3選戦略と「ポスト安倍」の暗闘 消化試合の裏で「次の次」をにらむ神経戦へ

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その河野氏がライバル視するのが小泉氏だ。衆院選での自民圧勝の「最高殊勲選手」となった同氏だが、総裁選が話題となる年明け以降も沈黙を守っている。「東京五輪が終わる2020年9月から日本は大きく変わる。それからが若い世代の出番だ」と繰り返す小泉氏は、党内でも「9月総裁選のキーパーソンの1人」(若手)とみられている。同氏は2012年総裁選では石破氏を支持しただけに、首相サイドも「今回も石破氏を支持されると、圧勝の流れが変わりかねない」と気をもむ。

河野氏は自らの後援会幹部に「小泉氏は近い将来の総理総裁就任は間違いないが、その前に私が…」と訴えたとされるが、今後の展開次第では「次の次」の総裁選が石破、岸田両氏らを飛び越えて「河野、小泉のKK対決になる」(若手)との見方も出始めている。

ただ、河野氏の父・洋平氏は安倍政治に批判的で、小泉氏の父・純一郎元首相は「原発即時ゼロ」を掲げて、共産党も含む野党に法案提出を呼びかけている。「親子は政治家として別人格」(河野外相)とはいえ、「ポスト安倍がKK対決ともなれば退陣後の首相の影響力を奪う」(自民幹部)ことも想定されるだけに党内の反応は複雑だ。

「解散しない」なら「東京五輪花道」説も

そうした中、昨年末に永田町で流布されたのが「首相の東京五輪花道」説。総裁3選を果たした首相が、2020年夏の五輪開催を成功させた上で、後進に道を譲るため任期途中で退陣する、とのシナリオだ。首相が順当に総裁3選を果たせば次の任期は2021年9月末で、現在の衆院議員の任期満了もその直後の10月下旬だ。仮に安倍政権が任期切れまで続けば首相にはもう一度、衆院解散の選択肢が残る。にもかかわらず首相は昨年の衆院選後、周辺に「もう解散はしない」とつぶやいたとされる。

解散は後継首相に委ねるという意味なら、「政治的に見て東京五輪直後の2020年秋が勇退のタイミング」(首相経験者)となる。その時点では衆院任期満了まで1年の時間的余裕もあり、次期首相の解散時期の選択肢も広がるからだ。併せて、任期途中の退陣となれば話し合い選出も含めた両院議員総会での後継選びとなる可能性が大きい。そうなれば、首相による後継指名も可能となり、首相周辺が出元とされる「岸田氏への禅譲」説も現実味を帯びる。

自民党総裁選の歴史は「権謀術数が渦巻く権力闘争」(首相経験者)ばかりだ。首相の父・晋太郎元外相は総理・総裁を目前にして病に倒れた。首相の政界の師でもある小泉純一郎元首相は、長年の盟友だった加藤紘一元幹事長(故人)を追い落として総裁選を制した。そして河野氏の父・洋平氏は党内抗争のはざまで、自民党で初めて総理になれなかった総裁となった。

ポスト安倍を窺う候補者達はいずれも世襲議員だ。当然「それぞれが先代の歓喜や挫折を背負っての総裁選挑戦」(自民長老)となる。連綿として続く政権党の権力闘争で1強首相の次に勝ち名乗りを上げるのはいったい誰か。「因果はめぐり、歴史は繰り返すのが常」とされる永田町の暗闘は、17日夕の首相帰国を受け、初夏に向けて「深く静かに潜航する」ことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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