50~60代に激売れする伊勢半「口紅」の正体 韓国「オルチャンメイク」好きにも波及?

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さらに、販促を仕掛けた昨年6月以降、「想定外の展開」(池戸さん)が起きる。20~40歳代にもネット上の口コミを中心に売れ始めたのだ。「親子でイベントに来る方々も。母娘間の口コミで広がったケースも多いと思う」と、池戸さんは分析する。

伊勢半のヒット商品の数々(撮影:尾形文繁)

「おばちゃんコスメに若い世代がなぜ?」と思うかもしれないが、おそらく、最近は韓国発の「オルチャンメイク」の流行などもあり赤リップを始め鮮やかな口元演出が人気なので、下の世代にもこの発色のよさは抵抗感がなく、むしろ魅力的に映ったのではないだろうか。8色の展開も長年の売れ筋色データを活用しているというだけあり、選びやすい。

ちなみに、ダントツ人気はCM使用色のレッド系02。次いでベージュ系03が好評で、20~30歳代にはピンク系01の支持率が高いらしい。

また、筆者のように唇が薄く紅筆やリップライナーが必須だという女性には救いの商品として映る。口紅→紅筆で輪郭取り→グロスの工程は正直面倒で、この商品のように1本で事足りるのは時短になりありがたいのだ。ポーチの中がかさばらないのもうれしく、この点は特に毎日化粧直しが必要なOLさんなどから高く評価されているのではないだろうか。ネット上ではこうした利点を含め、発色・ツヤ・塗りやすさなど商品の完成度を評価する声が多い。要は、ターゲット以外の層にも商品力が支持されたということだ。

江戸時代から続く品質へのこだわり

紅作りも江戸時代から変わらぬ製法で作り続けている

この商品力の強さは、やはり190年以上にわたる歴史にあるだろう。同社は1825年に日本橋で創業し、明治期には皇室御用達にもなった紅屋がルーツ。戦後は現在に続く近代化粧品の開発に舵を切ったが、原点となる紅作りは今もなお続けている。江戸当時と変わらぬ製法で紅を製造できるのは日本ではもう同社しかないそうだ。

こうした品質を大切にする職人魂が、同社には受け継がれているという。「社員は皆熱く、品質への意地みたいなものはかなり強い。代理店と協業するときも丸投げはしないし、こだわりが強くてやりにくいと思われていることがあるかも」と、池戸さんは笑う。

こだわりをスピーディに実現する体制も強みだ。開発企画から販促、広報宣伝、商品戦略、海外開発と、5部署は皆同じフロアにおり、ブランドごとにチームとなって動くので、販売までに要する時間が大手と比べても短いそう。営業との連携も強いため、客やバイヤーの声も即座に反映できるという。

独創的な企画力も同社の特徴だ。たとえば、今でこそ化粧品を自由に選べるドラッグストアの販売法は当たり前だが、1966年に個包装した商品をフックにかけて陳列する方式を業界で初めて導入したのは同社だった。二重まぶたを演出する「アイリッド」や、ツヤ出し専用リップ「キスミー シャインリップ」など業界初のヒット商品をはじめ、前述の「ヒロインメイク」やニッチな男性メークアップブランド「ルオモ」など、ベンチャー精神あふれる個性的な企画が多い。

歴史ある企業なだけに面白いエピソードはまだまだあるが、こうした風土や挑戦の積み重ねがあるからこそ、ユーザーのニーズをとことん詰め込んだ「紅筆リキッドルージュ」は生まれたのだろう。改めて、老舗のモノ作りは強い、と感じるヒット事例だった。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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