ビットコインは有事の資産防衛に有効なのか 預金封鎖や通貨切り替えがもし起きたら

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一方で、中国政府は仮想通貨の「採掘(マイニング)事業」を排除しようとしている動きが出ており、加えて韓国が仮想通貨取引の規制を強化するとの報道もある。

仮想通貨もまた、その国の法律によって簡単に排除される、もしくは取引禁止になってしまうのか……。今後の情勢を見ないとわからないが、国や企業の信用の担保がないということは、言い換えれば守られるべき法的根拠も何もないことになる。預金封鎖や通貨切り替えに本当に役立つのかという疑問もわいてくる。

中央銀行が脅威と認めれば潰される存在?

中央銀行は現在、ちまたで流通しつつある膨大な数の仮想通貨を認めるのだろうか。中央銀行が、ビットコインなどの仮想通貨の流通を認めれば、預金封鎖や通貨切り替えの際にも有効な手段になるかもしれない。

中央銀行が実際の通貨をデジタル化して発行するのは時間の問題とも言われる。

たとえば、中国はすでに2017年9月上旬にはビットコインなど複数の仮想通貨取引所を閉鎖し、並行して仮想通貨を活用した資金調達である「ICO」(イニシャル・コイン・オファリング)の全面禁止さえも行った。

ICOとはあるプロジェクトを実現するために、そのサービス内で何らかの形で使用することができる「トークン」と呼ばれる電子資産を提供し、対価としてユーザーからビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を受け取る仕組みである。

かつては、ビットコイン取引の80%が人民元建てだったことを考えると、中国政府が思い切った政策に出てきたという印象だ。

その狙いは、仮想通貨への過熱感やバブルがはじけたときの損失の大きさなどに配慮したと同時に、通貨のデジタル化で主導権を発揮しようという姿勢がある。実際に、中国政府は独自の「デジタル人民元」を発行する用意があると2016年1月に宣言しており、実現したら世界の金融市場に大きなインパクトを与えそうだ。

こうした中国政府の姿勢は、米国や日本にも大きな影響を与える。ただ、仮想通貨は独自で自前のシステムを構築できる「ブロックチェーン」の技術を使っているため、権力や富を独占させない「協同組合型」のビジネスを独自に構築できる斬新さとメリットがある。

アップルやアルファベット(グーグル)、フェイスブック、アマゾンといった、現代のビジネス界を牛耳る巨大会社に個人ベースでも立ち向かえる数少ないツールとも言われている。そういう意味では、米国や日本など先進国の多くは、ビットコインなどの仮想通貨がもう少し普及して、大きなマーケットになったところで規制を強化する手段に出てくる可能性が高い。

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