ビットコインは有事の資産防衛に有効なのか 預金封鎖や通貨切り替えがもし起きたら

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その方法は「預金封鎖」であり「通貨切り替え」という方法だ。日本でも、太平洋戦争の終結直後の1946年2月、膨らんだ戦費を賄うために莫大な財政赤字を負った政府は、それまでの通貨を切り上げて、通貨の価値を転換させることで国の財政を正常な状態に戻してしまった。預金封鎖が行われて、旧円から新円への切り替えが行われたのだ。

国民が持つ銀行の預金を封鎖して、封鎖している間に1円未満の単位を廃止し、それまで流通していた紙幣や硬貨を廃止して新円に切り替えてしまうことで、年に500%というインフレを収束させたわけだ。

こうした国家による強権的な手法は、戦争などによって財政赤字が膨れ上がった国によってしばしば行われる手法だが、国民にとっては最も避けたい悲劇的な結末と言っていい。日本の預金封鎖は70年も前のことになるが、世界的に見ると割としばしば行われるイベントだ。

2013年3月16日に実施されたキプロスの預金封鎖はわずか5年前のことだ。キプロスは、欧州の実質的なタックスヘイブンのひとつだが、ロシアの富豪などを中心にキプロスに資産を預ける投資家が多かった。そんなキプロスが、2013年3月16日にギリシャ危機のあおりを食って預金封鎖や預金に対して課税する預金税を実施している。その際に富豪たちが行った資金の逃避先がビットコインだったために、ビットコインは一気に価格が急騰して1BTC=11万円ほどに高騰した。

預金封鎖ほどではないにしても、最近も似たような政策を実施した国がある。2016年11月にインドが行った「高額紙幣」の廃止政策だ。11月8日の夜、突然モディ首相が演説で、1000ルピー(約1700円)紙幣と500ルピー紙幣を翌日から廃止すると宣言。日本で言えば、1万円札と5000円札が突然使えなくなり、一定期間内に金融機関に預けるか、新紙幣と交換するしか方法がなくなったことと等しい。インド政府は次の2つを目指したとされる。

➀国民経済の20%と言われる「ブラックマネー」の撲滅
➁現金経済からの脱却

1000ルピー札と500ルピー札の2つは、インドで発行されている紙幣の86%に相当する金額。経済的混乱は招いたものの、インド国民の多くがこの政策を支持しているとされている。

実質成長率はやや下がったものの、携帯電話の端末を使ったモバイル決済は、高額廃止前に比べて9割も増え、ブラックマネーの撲滅に大きな第一歩を踏み出したと指摘されている。

こうした預金通貨や高額紙幣の廃止といった政策は、キプロスにせよインドにせよ、ある日突然、実行される。政府とは、こうした権力を持っていることをわれわれは忘れてはいけないし、いざとなったときにも自分の資産を保持していく手段は考えておいたほうがいい。

キプロスでは、ビットコインが政府の預金封鎖からの逃避に使われ、インドでは経済のデジタル化推進につながったわけだ。ビットコインが、従来の金融システムに風穴を開ける存在、と言われる理由がここにある。

ジンバブエ、ベネズエラに見る仮想通貨急騰の真実?

ビットコインなどの仮想通貨は、「ブロックチェーン」と呼ばれる技術によって、政府の保証もなければ、干渉もない、完璧に独立し暗号化された通貨として存在している。政府が握っている強権的な政策から解放された存在として、究極の資産防衛法に使えるのではないか――という“夢物語”が語り継がれているのもまた事実だ。

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