景気はよくて株価が上がっても、人々の意見は二分され、政府は統治ができなくなっている。そして国際秩序は解体しつつある……と嘆き節が続く。「経済の人たちは、今の政治のひどさがわかってないんじゃないの?」てないら立ちが募っているようだ。
2018年は米中関係が軸になる
今年の10大リスクのラインナップは以下のとおり。著者による翻訳もしておこう。
① China loves a vacuum(力の空白を歓迎する中国)
② Accidents(偶発的な惨事)
③ Global tech cold war(米中ハイテク冷戦)
④ Mexico(メキシコ)
⑤ US-Iran relations(米イラン関係)
⑥ The erosion of institutions(空洞化する体制)
⑦ Protectionism 2.0(進化する保護主義)
⑧ United Kingdom(英国)
⑨ Identity politics in southern Asia(南アジアのアイデンティティ・ポリティクス)
⑩ Africa’s security(アフリカの安全)
いろんな読み方ができるのが、このトップ10リストの良いところ。筆者の場合、「今年は米中関係が軸」と解釈した。競馬式に言えば、①―③―⑦の3連複といったところか。
冒頭、①が意味するところは、トランプ政権下のアメリカがどんどん内向きになって、世界にぽっかりとできた「真空」に、中国がするすると進出して空白を埋めている。同レポートはさらに、「中東や中南米では、すでにアメリカよりも中国に魅力を感じる、という国が増えている」ことを指摘する。すなわち、アメリカはソフトパワーでも中国に劣後しつつあるということだ。
③は、その米中が展開しているハイテク開発競争を取り上げている。AI(人工知能)だのビッグデータだのといった世界は、当然、アメリカの独り勝ちなのかと思ったら、スパコンやロボット開発は中国も進んでいるし、何よりネットユーザーが7億7000万人、スマホ支払い人口が5億5000万人という「規模のメリット」を有している。つまり、ハイテクでも中国は侮りがたし、ということになる。
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