「2018年の10大リスク」の正しい読み方 トランプ大統領は、もはやリスクではない!?

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⑦の「進化する保護主義」という指摘も面白い。以前であれば、保護主義とは輸入関税をかける、数量制限をするといった単純な手口がほとんどであった。それがだんだん巧妙になり、政府補助金や現地部品の調達要請、さらにはハイテク製品のデータを政府に提出させる、といった新手法が使われるようになっている。経済摩擦もどんどん高度化しているわけで、これまた今年は米中間の通商摩擦が大きな問題になりそうだ。

こんなふうに、国際秩序の中心がアメリカから中国にシフトするなかで、②にあるようなアクシデント(偶発的な惨事)――たとえばサイバー攻撃や北朝鮮、シリアなどの軍事衝突、大規模テロなど――が起きたときの対応は非常に難しいものになる。

「トランプ政権」は、実はリスクではない?

トップ10リストの最後には、いつも番外編がついている。「リスクのように見えて、実はそうでもないもの」として、「トランプ政権」が挙げられている。

すなわち、ホワイトハウスは今年も迷走するだろう。強い大統領でも、なかなか仕事ができないのがアメリカ政治。まして基盤の弱いトランプ大統領は、中間選挙もおぼつかない。②で指摘したような「アクシデント」があれば、それこそ皆が苦労するだろう。それがなければ、ロシアゲート捜査の進展に伴う混乱が待っている。ただしそれで政策が動くわけじゃないからね、とほとんど匙(さじ)を投げるような結論になっている。何しろ今のワシントンでは、『Fire and Fury』(炎と憤怒)という内幕暴露本が評判になっている。「2016年選挙の開票日、トランプ陣営はドナルド本人も含めて誰も勝利を予想していなかった」てな話は、「ああ、やっぱりね」であったけれども、「(トランプ政権の初代国家安全保障担当補佐官を務めた)マイケル・フリンが選挙期間中にロシアとの不法行為に手を染めたのは、『どうせ負けるから問題ない』と思っていたから」という指摘には、思わずひざを打った。

あるいは、「ホワイトハウスのベッドでチーズバーガーを食べながら、3台のテレビを同時に見ている」という大統領の日常描写は目に浮かぶようだが、「マクドナルドを愛好するのは、大量消費製品で暗殺のおそれがないから」との解説にも得心がいった。

2018年も、われわれはこの大統領とお付き合いしなければならない。これでは世界中でリスクが高まるのも無理はあるまい。最近しみじみ思うのだが、ドナルド・トランプ氏の本質は「不動産王」でも「ポピュリスト」でもない。ましてや「白人至上主義者」でもない。「驚異の視聴率男」なのではないだろうか。

トランプ氏は、「アプレンティス」というリアリティTVのホスト兼特別プロデューサーとして、2004年から10シーズンにもわたって破格の成功を続けてきた。視聴率を維持するためには、必ずしも視聴者に好かれる必要はない。嫌われてもいいから、つねに話題を提供し続けなければならない。無関心こそが、最大の敵なのだ。実際のところわれわれは、「なんて低俗な番組なんだ!」などと文句を言いつつ、よく見ているではないか。

かくしてアメリカ大統領の「炎上商法」に乗せられて、われわれは怒ったり笑ったりしながらこの1年を過ごしてきた。今年もたぶん同じことが繰り返される。といっても、「トランプ劇場」に対して無関心でいることは難しい。

差し当たって次はスイスのダボス会議に乗り込んで、またまた大ひんしゅくのドラマを演じてくれるだろう。皆さま、心の準備はよろしいだろうか?

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