欧州で緊縮財政が和らいだ一方、日本では2014年の消費増税で緊縮財政に転じたが、その後2016年には安倍晋三首相が伊勢志摩サミットで財政政策拡大による協調を訴えるなど、緊縮政策がやや緩和された。同年、英国では増税政策を掲げ政権についたデービッド・キャメロン前政権は、国民投票の賭けに失敗し表舞台から姿を消し、そして米国では財政政策で3%成長を目指すトランプ政権が誕生した。紆余曲折はあるが先進国全体でみれば、緊縮財政政策が年々和らぎ、それによって経済復調が実現する構図が明確になっている。
これは、米国を含めて先進国では経済資源の「スラック」(たるみ)がまだ残っており、景気刺激的な金融財政政策が必要であることを示している。米国は相対的にはもっとも完全雇用に近づいているが、それでも、2018年も財政政策を中心とした経済政策の巧拙や、その基盤となる政治情勢が引き続きリスク資産のパフォーマンスに大きく影響している状況である。
日本銀行人事で金融緩和が徹底強化されるサプライズも
こうした中で、日本はどのように位置づけられるだろうか? 冒頭で紹介したように、年初早々の好調相場でほぼ四半世紀ぶりの水準まで株高となっていることは、日本経済の脱デフレと正常化が今後安倍政権によって実現する可能性が高まっていることを予見していると言える。2%インフレの実現に徹底的にこだわる金融政策運営が続き、総需要を減らす緊縮的な財政政策をさらに緩和する政策が求められる。金融政策の正常化が進む米国と比べても、その必要性はより高いと位置づけることができる。
すでに安倍政権はプライマリーバランス目標の先送りによって、柔軟な財政政策を実現する姿勢を明らかにしている。ただ現実的には、その後も小粒ながらも増税政策が実現、補正予算を含めた歳出の伸びもわずかにとどまり、やや緊縮的な財政政策運営となっている。
日本の株式市場が完全復活をするためには、経済最優先を実現する具体的な政策対応が求められると筆者は考えている。今後の政治情勢にも影響される側面が大きいが、安倍政権が拡張的な財政政策に転じるかどうかが、2018年の日本株のパフォーマンスを大きく左右する要因になるだろう。
なお、筆者は、現時点で世界の金融市場でほとんど織り込まれてない円安株高をもたらす国内の材料として、日本銀行の執行部人事で、金融緩和を徹底強化するメンバーが選ばれるサプライズが今後1~2カ月で起こりうると考えている。これが実現すれば、金融政策を含めた総需要安定化政策を徹底する安倍政権の政策がまったくぶれていないことが改めて示されることになるだろうし、拡張的な財政政策へ転換するシナリオの実現性が高まるだろう。
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