日本的「裏の承認欲求」が働き方改革を妨げる 仕事の効率化を妨げ、女性活躍の障害にも

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このような考え方は、いまもそれほど変わっていない。

とりわけ幹部が報告の場に立つときには、失敗して恥をかかせぬよう部下は万全の準備をする。手持ち資料にはタイムテーブルに沿った発言内容があらかじめ記され、どんな質問があっても答えられるような想定問答や、議論の展開に応じていくつかのシナリオも用意される。そうした資料づくりに費やされる部下の時間と労力は膨大なものになる。

蛇足になるが大学のレポートや卒業論文も、たいてい「○万字以上」と決められている。そして長いほど評価される傾向がある。考えてみれば、わざわざ冗長な悪文を推奨しているようなものだ。

女性活躍に立ちはだかる「見えない壁」

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ところで働き方改革のもう1つの目玉は女性の活躍や、ダイバーシティ、すなわち多様な人材の活用である。そこでもまた「裏の承認」文化が障害になる。

現実に家事や育児の負担を担っている女性は、男性と同じように遅くまで残業することも、「飲みニケーション」などに付き合うことも難しい。そのためほかの条件が同じなら、男性より評価が低くなる場合がある。しかも管理職に就けば残業や付き合いの負担も一層増えるので、昇進に尻込みする女性が少なくない。

プライベートを大切にし、合理的な働き方にこだわる外国人もまた非効率な「裏の承認」文化に抵抗を示す。実際、欧米人はもとよりアジア人も、このような文化的理由で日本企業より欧米企業で働くことを選ぶ傾向がある。

さらに派遣やパートなど非正規従業員のなかにも、「裏の承認」を強く求められる正社員を避け、待遇が悪くても自由な非正規で働きたがる人が多い。それが正規と非正規の格差を是正し、同一労働同一賃金を実現するうえで見えない壁になっている。

このようにわが国特有の「裏の承認」文化が仕事の効率化を妨げ、働き方改革の障害になっているのである。そこに着目しなければ改革は進まない。

太田 肇 同志社大学名誉教授

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おおた はじめ / Hajime Ohta

兵庫県出身。同志社大学名誉教授。経済学博士。主な研究分野は個人を生かす組織・社会づくり。日本における組織論の第一人者として著作のほか、働き方改革や社員のモチベーションアップなどに関するマスコミでの発言、講演なども積極的にこなす。また猫との暮らしがNHKで紹介されるなど、愛猫家としても知られる。著書は、『日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか』(集英社新書)、『「自営型」で働く時代』(プレジデント社)、『何もしないほうが得な日本』(PHP新書)、『日本人の承認欲求』(新潮新書)など40冊以上あり、大学入試問題などに頻出している。『プロフェッショナルと組織』(同文館出版)で組織学会高宮賞、『仕事人と組織』(有斐閣)で経営科学文献賞、『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)で中小企業研究奨励賞本賞を受賞。

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