日本的「裏の承認欲求」が働き方改革を妨げる 仕事の効率化を妨げ、女性活躍の障害にも

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人間には他人から認められたいという、承認欲求がある。そして欲求が満たされるかどうかは社会や文化と深くかかわっている。

わが国では、いくら優秀で大きな業績を上げても、周囲に同調し、組織のために頑張る姿勢を見せなかったら評価されない傾向がある。積極的な「表の承認」より、消極的な「裏の承認」のほうが重視されるのである。

会社や役所でも、どれだけ効率的に働き生産性を上げるかより、周りと同一歩調をとっているか、忠実にコツコツと努力しているかが評価される。そして、少なくとも中間管理職までは、減点主義の世界で生き残った人が昇進していく場合が多い。このような環境のなかでは、いくら業務を見直しても労働時間短縮は進まない。それどころか業務を見直そうという意識さえ広がらない。

また、わが国ではワークライフバランスを向上させるための在宅勤務や裁量労働の導入が叫ばれながら、なかなか普及しない。逆にいったん制度を取り入れたものの廃止する企業が相次いだ。社内の業務や顧客対応に支障が出るだけでなく、利用者も少ないのが主な理由だという。

これも「裏の承認」文化と無関係ではない。会社に来ないこと自体を気兼ねするし、まじめに頑張っているところを認めてもらえないからである。介護休暇や子育て中の短時間勤務、男性の育児休暇などを利用する人が少ないのもおそらく同じ理由だろう。

“改善活動”が「働き方改革」に逆行する場合も

頑張りを認めてもらおうという心理は、働き方改革の足かせになるだけでなく、むしろ改革を逆行させかねない。

その典型が会議である。わが国では会議の数が多く、出席者の人数も多い。しかも長時間にわたる。結果的にそうなるというより、意識的にそうしている面もある。

その源をたどると、皮肉なことに業務の改善活動に行き着く。改善活動やQCサークルは日本的経営の代名詞ともいえるほど海外でも知られているが、その改善活動を国際的に普及させたコンサルタントの今井正明氏は、QCサークルの改善努力を測る基準として、「毎月開かれる会合の回数」「参加率」「解決案件数」「提出された報告書の数」などを挙げている(今井正明『カイゼン』講談社、1991年、70頁)。

会議をたくさん開き、できるだけ大勢参加したほうが高く評価されたのである。おそらく会議の資料も分厚いほどよかったのだろう。

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