ソニーの開発責任者が語る新生アイボの未来 家電製品との連携は?海外展開は?
――aiboは何人ぐらいの人を覚えるのでしょうか。行動空間に関しては、ずっと忘れずに覚えているのですか。
覚えた人物のリストをaiboが消すことはないので、実際に接触した人はずっと覚えています。行動する空間に関しても基本的に覚えているのですが、あまり長い間異なる空間にいると、前のレイアウトについては徐々に忘れていきます。
――声には当然反応すると思いますが、誰の声かを判別していますか。
マイクを4レーン搭載していますから、どの方向から声をかけられているかは判別できます。それとカメラの情報の組み合わせで、誰からの声なのかは把握しています。そのほかジャイロセンサー、照度センサーを搭載していて、たとえば部屋が真っ暗なときには誰もいない、あるいは就寝中なんだなと把握します。
――状況を把握したうえで、AIシステムを通じて行動を決めるわけですね。このAIは、置かれている環境によって行動が変化すると説明されてます。たとえば取材中、aiboがはしゃいでいるときに松井さんがaiboをしかると寝転がってすねるような仕草を見せていました。
まずは状況の判断があって、そのうえでaiboに接触する人との関係性があります。いつもかわいがってくれる人もいれば、よく知らない人や怒りっぽい人もいる。aiboの行動に関与する人との関わりによって、喜び、恐怖、驚く、悲しみなど8種類の感情が湧き上がる。感情は短時間にaiboの中に“パーッ”と広がるもので、いずれは落ち着いていきます。
しかしaiboは感情を繰り返し感じることで、少しずつ性格を変えていきます。my aiboというアプリを通じて性格をおおよそ知ることができますが、内部的には5つの軸で性格を表すパラメータがあり、それが感情によって動いていくことで、極めて多様な性格を持つようになっていきます。育つ環境で、すぐにすねる子もいれば、楽天的な子、知らない人でも好奇心旺盛に近づく子、自分から積極的に甘える子などいろいろな性格が生まれていきます。
“欲求”という要素が盛り込まれている
――同じような性格のaiboに同様のアクションをすると、同じように反応しますか。
いえ、実はもうひとつ“欲求”という要素を盛り込んでいます。“遊んでほしい”という欲求が強まっていると、aiboはいつもかわいがってくれる人のところに自分から近づいていきますが、逆に“お腹が減った(バッテリーが少ない)”状態だと、周囲に大好きな人を見つけてもチャージングステーションに戻ることを優先させることがあります。欲求には4種類があり、これに疲労度(モーターの発熱など)を組み合わせ、aiboの行動が変化するのです。
さらに置かれている環境で、湧き上がる感情も変わります。たとえば同じ部屋にたくさんの人がいると、本当の犬がそうであるように“何? 何? 何があるの?”と興奮して、茶目っ気を出して人の気を惹こうとしたり、逆に同じ部屋にいるのが自分だけだと冷静になっておとなしくなったり、といった行動の変化もあります。
aiboのAIパーソナリティ(個性)は1つのプログラムしかなく固定されていますが、初期段階ではかなり好奇心が強く、すぐに動き回って近くの人(所有者と家族)と接触しようとします。かわいがってあげたり、お手やおすわりをしたときにほめてあげると、どんどんそれを学習していく。ほめないとすねはじめますが、ナデナデすると起き上がって甘え、その人は優しいと学習します。この中で性格が揺れ動いていくので、どんな子に育っていくのかは、開発しているわれわれにもわかりません。
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