しかし、より本質的な問題は技術の進化である。仮想通貨は解読が困難な暗号技術を使っている。もし、計算速度がケタ違いで暗号解読を容易に行う「量子ゲート型」のコンピュータが開発されれば、インターネットの情報も仮想通貨もあっけなく解読されてしまう。量子コンピュータの実用化にはまだ懐疑的な科学者も多いが、11月にIBMがこのタイプのコンピュータの試作機を発表し、実用化の可能性が高まったとされる 。
技術で信任を得た覇者が未来の金融を制する
そもそも、現在の貨幣システムは極めて非効率だ。たとえば、世界に300万台あるATMの維持管理費は年間数兆円に上るとみられる 。その他、現金移送費、盗難対策費などが日々のコストとしてのしかかり、間接的に利用者が負担させられている。
海外取引の利用者負担はさらに重い。たとえば、30万円を銀行から海外送金するには、送金銀行分、為替、受け取り銀行分という3種類の手数料が、合計で1回1万円近くかかる。そのうえ、1回当たりの送金はおよそ100万円が上限となっている。技術者たちは、仮想通貨相場とは無関係な世界で、こうした金融の非効率さを改善しようと開発に死力を尽くしている。ここまで来たからには、何らかの改革が起こる可能性は高いと思われる。
しかし、インターネットのウェブ・ブラウザの世界でも20年前に始まった時点で覇者を予測するのは不可能だった。先駆者は覇権を握れず、利便性や技術に優れたものがさまざまな経緯を経て選別されてきた。仮想通貨の世界でも、その覇者は世界中の信任を得て金融の仕組みを一変させ、大きな価値を生むだろう。ただ、それがどのような技術が主体になるのかが見えるにはまだ時間がかかりそうだ。
オランダのチューリップかヤップ島の石貨フェイか――。現段階の仮想通貨の価値を疑えば切りがない。しかし、将来の覇者を見極めるためには、仮想通貨をフォローすることは必要不可欠な一歩である。
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