ビットコインしのぐオルトコインの百鬼夜行 大暴落した仮想通貨のリスクと将来性を検証

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さらに、仮想通貨の取引についても、制度的にはまだ未成熟である。

さまざまな課題の中で、当面最大の問題は、取引所の経営破綻リスクである。12月19日にも韓国の小規模取引所であるYoubitがハッキング被害に遭い、総資産の17%を失って倒産した。顧客から預かった資産は25%カットされると説明している 。ほかにも小規模のハッキングは世界中で発生しているとみられる。

日本では、こうした取引所リスクを軽減するため、9月から金融庁が仮想通貨交換事業者の登録を開始している。資本金が1000万円以上であることのほか、「サイバーセキュリティ対策」「マネーロンダリング対策」「顧客の預かり資産の分別管理」「利用者保護」などがチェックされている 。現在15社が登録済みだが、国内最大級のコインチェックなど十数社は継続審査中とみられている。

また、仮想通貨の中には、リップルのように、コインではなく取引所からの「借用書(IOU)」を取引する特殊なものもある。この場合、取引所が倒産した場合、倒産手続きに巻き込まれる可能性がある 。

国による規制や技術の進歩もリスクとなる

国による規制もリスク要因だ。

欧州の小国では、今月に入って仮想通貨を支援する動きが活発化している。その筆頭格は、北欧のエストニアである。8月に独自の仮想通貨の発行を宣言し、12月19日にその概要を公開した。12月にはトルコもこれに続いた 。英国領のジブラルタルは2016年7月に仮想通貨のETI (Exchange- Traded Instrument)を上場しており、EU における仮想通貨のハブを目指すとしている 。東欧のベラルーシは、12月22日に仮想通貨業務への税制優遇措置を発表した。

一方、大国では取引に対して厳しい対応が目立つ。主に、マネーロンダリングやテロ対策が目的である。すでに、9月に中国がICOや仮想通貨取引所に対する厳しく規制を導入した。離脱交渉でEUともめている英国も、この点についてはEU各国と協調し、統一的な仮想通貨規制を模索している。ロシアも今月末までに規制案を発表するとしている。自前の通貨を発行する可能性もある反面、取引所規制は厳しい内容になるとの見方もある。

微妙なのは日・韓・豪州である。日本に次いで豪州も、取引所の登録制度を導入した。一方で韓国は、先週、検討していた仮想通貨規制の見送りを決定した。日本の先例を見て、規制導入による取引増加を警戒したもようだ。米国は態度を明確にしていないが、今月、ビットコイン先物の上場を容認している。

このように各国のスタンスの違いが大きいことから、来年のG20先進国首脳会議では、仮想通貨への対応が議題となる可能性が高い。もし主要国が取引を完全に禁止すれば市場への影響は不可避だろう。

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