就職率は3,4割。中国の就活は大変です 中国エリート学生座談会(その1)

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――先ほど条件がよかったという話がありましたが、具体的には?

羽泉:僕は上海人ではありません。大学の間は寮暮らしで、食住は保証されていますが、就職したらひとりで生活していかなくてはなりません。そのためには給料や福利の面など、考えなくてはならないことがたくさんありました。

それに僕らのような農村戸籍の者にとって、就職後に上海戸籍が取得できるというのは非常に重要です。そう考えると、国営企業がいちばん有力な選択肢でした。さらに経済面をプラスすると国営の商業銀行が安定しているだろうと考えて、今の就職先に決めたんです。

――そういえば、上海人は張輝さんだけですね。みなさんは就職後、上海戸籍を取得できるのでしょうか?

王弘:上海の211工程(教育レベルの向上のため政府が定めた100の大学に投資を行う政策)の大学で、政府が奨励する専門分野を専攻していれば、就職先がどこであれ、基本的に戸籍を得ることができるはずです。

黄広明:僕は勤務地が深センなので、残念ながら上海戸籍は望めません。でも、仕事の内容は気に行っています。政府系ローンのリスク管理を担当するのです。投資先は工学系の企業ですから、もともとの専門も生かせます。待遇もほかの企業に比べるとよいです。

これで勤務地が上海だったら言うことなかったのですが、深センではたびたび香港に行くことになるでしょうから、証券会社へ転職するなど、別の道が開けるかもしれません。

――そういえば日本企業に応募した人はいますか?

羽泉:僕は日本企業からも内定をもらいましたよ。勤務地は東京で、ちょっとひかれましたが、職種は営業事務でした。営業職は人脈が命です。今後ずっと日本で仕事をするなら、日本企業でもよいですが、僕の根は中国にあります。いずれ必ず中国に戻るでしょう。そうなると、日本で築いた人脈は、中国での仕事にはあまり役に立ちません。

もし技術職であれば、日本に行っただろうと思います。日本の先進的な技術から、学べることはたくさんあったでしょう。

黄広明:実は僕も日本の企業数社から内定をもらいました。勤務地は東京や大阪です。小さいころから日本の漫画やアニメが好きで、日本語も少しだけ勉強したことがあります。学部時代のクラスメートが5、6人、日本で就職していて、みな日本はすごくよいと言っています。

でも最終的にあきらめたのは、両親からのプレッシャーが大きかったからです。もし兄や姉がいたら絶対、日本に行っていたでしょう。でも一人っ子なので仕方ありません。

――両親に反対された?

黄広明:実際に何か言われたわけではないのですが、もし僕が日本に行くと言ったら、「親の老後は誰がみるんだ」という話になったでしょうね。

実は上海にオフィスのある外資系会計士事務所からも内定をもらっていたのです。僕は上海で就職したかったので、そこに行こうと思っていたんですよ。でもそこは仕事がきついことで有名だったので、両親に反対されました。息子がそんな大変なところに就職するのは忍びないと思ったみたいです。それに政府系の投資銀行のほうが安定しているからと言われ、そちらに行くことにしました。

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