「筋トレしても効果のない人」の大いなる誤解 頑張っても体が変わらないメカニズムの正体

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筋肉を拡大して見ると、周囲に毛細血管が広がっていることがわかります。毛細血管は、全身の細胞に栄養素や酸素を供給し老廃物や二酸化炭素を回収し続ける「物流機能」を担うもの。トレーニングで生み出された筋肥大に役立つホルモンを、筋肉の材料とともに速やかに筋線維に届けます。

運動習慣のない人は、この毛細血管が閉じてしまいますが、運動習慣がつくと再開通するし数も増えていきます。血液という荷物がひんぱんに運ばれるようになると、新たな配送ルートをつくるわけです。

このルートは繊細で、喫煙するとキュッと締まるしストレスにも弱い。肥満により血管内にコレステロールが付着しても狭まって、物流にダメージを与えます。

ルートができても、それぞれの筋線維に手渡す手段がなければ筋肉は大きくなりません。ここを一手に担うのが水です。「筋肉イコールたんぱく質」 とイメージする人は多いですが、筋肉の中で力を発揮するたんぱく質の割合はわずか10%。75%程度は水で、残りはミトコンドリアなどの酵素たんぱく質や脂肪などで構成されています。焼肉でも、焼けば焼くほど肉は小さくなりますが、あれはたっぷり含まれた水が蒸発するからなのです。

水分不足は悪いことしか起こしません。筋肉の材料が届かなくなるだけでなく、水分を介して体内で起きる、さまざまな化学反応が抑制され代謝が悪くなります。そうすると力は出なくなるし筋線維の合成も進まない。さらに筋肉の質量自体も減ってしまいます。毎日6リットルの水を飲む競技者もいますし、一般のトレーニーでもこまめに水を飲み、毎日2リットルは飲むという人が多いのは、そのためです。

発達した毛細血管と、多量の水。これがそろって初めて、筋肉を増やすための「体内インフラ」が整ったと言えます。

筋トレから得られる、さまざまなメリット

『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

筋トレが体に起こす変化は、筋肉を大きくするだけにとどまりません。筋肉を動かすと血流が増え、その繰り返しは全身の代謝を活発にします。血液を送り出す心臓や酸素を取り入れる肺も鍛えられて、日を追うごとに持久力は向上。さらに胃や腸も活性化するため消化・吸収機能が高まります。

意外かもしれませんが、脳も活性化します。強く、速く動作する、精密に動作する……。これらは大脳を使わなければできません。気づいていなかった体の使い方や新たな感覚の芽生えに気づくとき、脳は興奮し活性化しているのです。

そして 大脳の視床下部が刺激されると、さまざまなホルモン――特に男性ホルモン(テストステロン)やアドレナリン、成長ホルモンの分泌がさかんに。これらは意欲をもたらし気持ちを前向きにするため、活力や性欲の維持にも深く関与。私たちの活力を奪う、 加齢によるホルモン分泌能力の低下を食い止めるというわけです。

このように筋肉を強くすることは、さまざまな器官を強くします。しかも知識と技術を駆使すれば、毎日数分でも体を変えることは可能なのです。

岡田 隆 日本体育大学准教授、理学療法士

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おかだ たかし / Takashi Okada

1980年、愛知県生まれ。日本体育大学准教授。理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JOC強化スタッフなど役職多数。日本体育大学大学院体育科学研究科修了。2014年東京オープンボディビル選手権大会70kg以下級優勝。トレーニング法や食事法など肉体改造に関する最新情報を世界中から集め、自らの体で試しつつ検証を重ね有効なものをトップアスリートに伝授している。「鋼鉄の肉体を誇る錬筋術師」の異名を持つ。

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