JAL先行、ANAが追う国内線Wi-Fi競争の行方 短距離路線のサービス差別化で試行錯誤続く

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ANAも無料化を機に、通信容量などについてプロバイダのパナソニック アビオニクスとの契約を見直していく方針だ。「長い時間たくさんの人が使えば、通信不良になりがち。プロバイダーから技術的な助言をもらい、無料化にも耐えうるだろうと判断した。つながりづらい時間がないよう改善を続けたい」(ANA CS&プロダクト・サービス室の伊東英孝・商品戦略部リーダー)。

後発のANAとしては、外部のネット接続だけでなく、機内のネットワークに接続して楽しめる無料エンターテインメントプログラムの豊富さを強調する。ネット接続無料化を開始する2018年4月には、コンテンツ数が100を超える見通しだ。人気テレビドラマなどの動画、音楽、電子書籍などを豊富にそろえていくという。

全席モニター完備、地上交通との競争に勝つ

そもそもWi-Fiのニーズが高かった背景には、JAL、ANA両社とも、これまで国内線機材にシートモニターを設置していなかったことがある。だが、モニター事情にも変化が出てきた。

ANAは2017年9月に全席シートモニター完備の小型機「A321neo」を導入。乗客の多くがシートモニターを実際に使っているという(写真:ANA)

ANAは2017年9月、国内線用機材として初めて全席にシートモニターを完備したエアバスの「A321neo」型機を導入。そして今回Wi-Fiの無料化と同時に、国内線の主力機であるボーイング「777」「787」型機の全席にシートモニターを設置していくことを明らかにした。座席の改修を経て、2019年度下期から順次展開する。

この背景についてANAの伊東氏は、「Wi-Fiはスマホを持っている限られたお客様にしか提供できない。衛星を使った通信も速度が限られる。(エンタメを楽しむための)いろいろな選択肢を用意することが重要と考えた」と説明する。前出の小別当氏は、「国内線の競合はJALよりもむしろJRかもしれない。新幹線だけでなくリニア(中央新幹線)も出てくる。機内で楽しめる要素を増やし、移動の速さ以外の価値も提供していきたい」と意気込む。

新興航空会社では、北九州を拠点とするスターフライヤーが全席にシートモニターを設置している。座席間隔の広さなどとともに評価され、同社はJCSI(日本版顧客満足度指数)調査で国内航空会社として9年連続トップだ。大手も無視できないサービスになったといえる。実際、JALの江幡氏も「シートモニターはJALとしても考えていかなきゃならないと思う。お客様のニーズを見つつ、これから検討していく」と話す。

競合の多い国際線よりも、JALやANAにとっては国内線が収益基盤として重要だ。国内線のない香港やシンガポールの航空会社の苦戦ぶりを見れば明らか。Wi-Fiの通信品質が上がり、コストも下がれば、サービスの形はさらに変わるだろう。”ドル箱”だけに、妥協のない試行錯誤がまだまだ続きそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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