ANAはなぜロサンゼルスに1日3便飛ばすのか 成田を本当の「ハブ空港」にするための戦略
米国西海岸最大の都市、ロサンゼルス。毎年30万人強の日本人が訪れる人気の観光地として知られるほか、多くの日本企業が米国事業の拠点を置く。
訪れる人の足となる航空路線も多く、現在日系では全日本空輸(ANA)が成田と羽田から、日本航空(JAL)が成田と関西からそれぞれ1日1便ずつ飛ばしている。このほか米国系ではデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、アジア系ではシンガポール航空も首都圏から運航する。日米路線の中では、ニューヨーク線と並ぶ”ドル箱”だ。
この路線でANAが攻勢をかける。同社は6月28日、今秋から成田―ロサンゼルス線を1日1便増やし、ロサンゼルス線を1日3便体制にすることを発表した。運航開始は10月29日で、機材は既存路線と同様のボーイング「777-300ER」を用いる。
盛況が続くロサンゼルス線
既存のロサンゼルス線の搭乗率はここ数年、成田発着が87%前後、羽田発着が90%前後と、実質満席の状態が続いていた。日本人の観光客やビジネス客の往来が活発だったためだ。
だが、今回の増便には、日本人需要の取り込み以上に重要な役割がある。「アジアと北米を往来する乗り継ぎ客」の獲得だ。直行便を含むアジア・北米間の流動はここ数年、年7.5%のペースで成長し、2016年は3000万人強に達した。
この市場では、従来米国系航空会社が強かった。近年は中国系や中東系の勢いが増している。一方、ANAとJALを合わせた日系のシェアは8%ほどにとどまる(数値はすべてANAの推計)。
日本の人口が減少の一途をたどれば、当然航空需要も減退する。今ANAもJALも注力するのが、外国人客への販促だ。直近で大きく成長した訪日需要に加え、三国間を移動する乗り継ぎ需要が肝になるというわけだ。
特に重視するのが、成田でのアジア路線と北米路線の接続。「アジアの成長を取り込むためのハブ」(ANAマーケティング室ネットワーク部の林寛之マネジャー)と位置づけ、近年は東南アジアを中心に路線網を広げてきた。
だが三国間の乗り継ぎ客を取り込みたい一方で、「北米側の座席に空きがなかった」(林氏)。成田とアジアを結ぶ路線の平均搭乗率は80%前後で多少の余裕がある。そこでANAは日米路線拡張の検討を始めた。
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