ANAはなぜロサンゼルスに1日3便飛ばすのか 成田を本当の「ハブ空港」にするための戦略

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なぜロサンゼルスだったのか。ANAの推計によれば、ロサンゼルスは東南アジアからの渡航客数が1日あたり約1800人(片道)と米国主要都市で最も多い。フィリピンやベトナムなどからの移民が多いためだ。「これで一気にアジア路線の客を北米へと送ることができる」と林氏は期待を込める。

乗り継ぎ拠点とするには、利便性の高いダイヤも考えなければならない。成田には「バンク」と呼ばれる、乗り継ぎしやすいように路線の発着をまとめた時間帯を夕方に設けている。

たとえばANAの場合、15時頃にアジアからの便が到着し、17時~18時頃に出発する米国行きの便に乗り継げる。逆もしかりで、15時~16時過ぎに米国からの便が到着し、17時~18時頃に出発するアジア行きの便に接続できる。

成田の夕方はひっきりなしに米国便が出発

今回加わる新たなロサンゼルス線は、成田発が16時。既存路線は17時05分発だ。長距離国際線において、同じ時間帯に同じ地点の路線を設けるのは異例だといえる。それだけアジア路線との接続が重要なのだ。

ちなみに成田ではANAが提携するユナイテッド航空も17時05分発のロサンゼルス便を飛ばしている。だがユナイテッド側の需給も逼迫しており、「増便に対する反対はなかった」(前出の林氏)という。

ここ数年、世界の全方面に路線網を大きく広げてきたANAだが、今年は「足場固めの年」と位置づけ、目立った新路線はなく既存路線の増便などで供給を伸ばす程度だ。ロサンゼルス線にかかる期待は小さくない。

視界には当然JALの姿もあるだろう。JALも今年度から始まった4カ年の中期経営計画において、「北米と東南アジア間のネットワーク強化」を中心に据えた。ただ今のところ米国本土や東南アジアの新路線の発表はない。ANAとしては差を付けておきたいタイミングだといえる。

実際の増便から4カ月も前に発表し、販売期間を長く取ったANAのロサンゼルス線。今まで以上に、客の顔ぶれは多様になるかもしれない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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