老人大学で英語も!韓国ジジババの育児地獄 共働き子供夫婦を助け、孫の面倒見1日9時間もザラ

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ソウル市内に住むソン・ミヨンさん(女、60)は5年前から娘夫婦とともに暮らしている。結婚したと同時に住み始めた住居の大家が入居時に支払う一時預かり金を一気に5000万ウォン(約457万円)に引き上げると、これを支払えなくなった娘夫婦が荷物をまとめ両親の家に戻ってきてしまった。

仕事を持つ娘に代わって掃除に洗濯、食事の準備までやるのは当然となり、今年小学校に入学した孫の面倒も祖母の仕事になってしまった。娘夫婦に家を出て行く考えはない。共稼ぎだが、家を出て行けばお手伝いさんの支払いや食費などの生活費の負担が増える。それでは夫婦どちらかの給料がそのまま飛んでいくためだ。

これに加え、マンションの賃貸料まで出してしまうと給料は残らない。一時預かり金が上昇している今の不動産市況ではなおさらだ。ソン・ミヨンさんの娘、キム・ウンジさん(37)は「いくら肉親とはいえ、夫と子どもと一緒に生活するには気を遣うことが多い。でも、家賃の心配をする必要もなく生活費負担も減る。貯金するにはいちばんいい」と打ち明ける。

ソンさんは「子どもに向かって出ていけとも言えず、とはいえ歳をとって精神的・肉体的にしんどい」とこぼす。育児政策研究所によれば、0~5歳の育児にかかる費用は月平均118万0522ウォン(約10万円)に達する。前出のソ・ムンヒ先任研究委員は「結婚後に実家から独立したものの、経済的負担、子どもの養育の難しさのような現実的問題を解決できる最も簡単な方法が両親との同居」と指摘する。

祖父母対象の育児教室もさかんに

祖父母が育児に参加するケースが増えていることを受け、育児用品企業が老年層を助ける製品を相次いで出している。温度センサーを内蔵したほ乳瓶まで商品化された。地方自治体も老年層向け育児教室を開催し始めた。「黄昏育児」時代に適応した新しい動きだ。祖父母たちも、これまでとは変化した育児環境に合わせて育児方法を学ぶ。予備祖父母を対象の育児教室も人気だ。8月31日、ソウル市の江南区保育情報・育児支援センターでは、子どもたちを育てる祖父母を対象に「尊敬される祖父母になるために」という授業を行った。

午前10時から始まったこの授業には、20数名の祖父母が出席。この日の授業は「知恵を生かした祖父母の役割」「変わる養育方法」「孫の養育10の知恵」といった内容で進められた。同センター長のパク・ジュヨン氏は「最近はおばあさんだけでなくおじいさんの出席も増えた。2010年から毎年1、2回、祖父母教室を開いている」と言う。

今後は授業回数も増やす計画だ。この日の授業に出席したペ・グァンスクさん(女、58)は「いま5歳と3歳の孫を見ているが、自分の子どもを育てていた時代とは大きく変わった。孫を育てるために、今の時代に合ったやりかたできちんと面倒を見たいと考えて授業に出席した」と意欲を見せた。

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